今日は9時出社でID講習を受けた。IDは確かインスタントドライバーの略で、業務委託という意味。パートとかパートナーとかの非正規の研修である。

まずよくあるコンプライアンス。客の個人情報や会社の個人情報をSNSに投稿してはならないというものだ。会社のユニフォームやロゴがあるものをSNSに投稿するのも不可。これは納得できる。会社の広報だと勘違いされるからだ

ただ私はコンプライアンス厨が嫌いなので、それ以外のもの、誹謗中傷に当たりそうなリスクのある内容は書く

次いで接客態度や服装について長々と座学を受けた。笑顔ではつらつと相手の目を見て、お辞儀と挨拶をしっかり欠かすなと命令された。

で、灯油を配送先の老人とはしっかりと世間話して好感触を得ろ、だと。灯油配送業務で接客までやらされるのは割に合わないが、会社のイメージアップのためにその身を粉にしろという命令だ

次いでわが社の不祥事の事例と対応策の紹介だった。過去に不正があったので、今は灯油の排出量がしっかり計量されているので、止めようね。疑われそうになったら、ちゃんと車載カメラにレシートの発行が映るようにして身の潔白を証明してくださいね、という内容だった。まあ最もだ

その次の不祥事の内容は一番興味深かった。過去灯油の給油量をちょろまかすという不祥事をやったパートナーがいるのだ。

具体的に灯油のポリタンクに18リットルいれるところを17リットルしか入れず、一リットル分余分に請求していた。その一リットル分100円を自分の懐に入れていたのだ。一軒回るごとに200~300円程度着服できる計算になる。これを何年も続けていた小賢しい配送員がいたのだ

それが発覚したんだが、ここからが予想外だった。なんとそれを暴いたのはTBSの取材クルーだったのだ。取材クルーがその配送員を車で尾行して、給油してるところを撮影。メーターが回る量が多いことを取材カメラに納める決定的な証拠をとらえた。そしてTBSが全国に放送したことで全国にりゅうふされた。

なぜこれが予想外かというと、単独の犯行の場合マスコミが事実を最初に暴くことはない。会社の同僚や上司が犯行を発見し、容疑者を懲戒解雇して経営層が公表し問題が収束していく。

だがマスコミが最初にそれを暴いたとなると、会社ぐるみの不正行為の疑いをもたれる。それで、全社員が謝罪と賠償に奔走し、親会社にも見放され、会社が廃業寸前まで追い込まれた

しかし一年半にも及ぶ裁判の結果その配送員の単独犯行だと認められ、被告に損害賠償を請求する審査を出した。それで会社ぐるみではないと認められ、首の皮一枚つながったのだ

TBSの取材クルーがなぜこの小犯罪行為を知ったかは不思議だ。多分灯油を購入していた客からタレコミがあったんだろう。ただ普通なら会社にクレームが入って賠償、配送員を懲戒解雇して終了していたはずだ。それであればまだ傷も浅かった

数奇なことに、TBSの取材クルーはこのタレコミが事実であると確信し、容疑者に気づかれることなく見事にその現場をカメラにとらえることができたのだ。そいつらはすこぶる優秀だといってもよい

悪さをしていた配送員も気の毒としか言いようがない。多分何年も続けて10万程度くらいしか稼げなかっただろう。もう10年近く前の話だが、今も会社に賠償を続けているとのことなので、億に近い額を請求されているはずだ。前科もついたはずだし、人生は完全に終わってしまった

もう一つ運の悪い話がある。実はこの悪事を働いていたのは二人いたのだ。共謀するような事ではないので、一人で回って灯油代をちょろまかしていたやつがもう一人見つかった

TBSの取材クルーに犯行を暴かれたのは一人だけだった。だが被告が会社に問い詰められている際に、もう一人悪さをやっている奴をげろってしまったんだろう

このもう一人の人物はおそらく被告に、この灯油をちょろまかす方法を実践して教えた人物だと思われる。例えば被告がこの方法を教えた人物がいた場合、逆に被告が犯罪行為を指示したことになるので、げろってしまうと余計に罪が重くなってしまう。また教えたからと言ってやっている確信はない。教えられたが全然やってないといわれればおしまいだ

被告に良かれと思ってこの悪さを教えたんだろうが、それが最悪の結果になった。道連れになって本人も人生が終わってしまったのだ。コイツが一番運が悪いだろうな。コイツが悪さをばれるようなへまをしたわけではないからだ

しかしげろったのは良いことだった。責任が二分されるし、悪事を働いている人間がもう一人暴かれたので、会社にとっては益になった

話は戻って残りの講習については写真を見せながらヒヤリハットの討論や、優秀なパートナーに送られる表彰制度について説明された。しかし私にとってみれば厳しく仕事ぶりを審査される鞭ばかりで、飴の話題がなかった。表彰なんかとれるわけねえし

なぜ飴の話題をださなければならなかったか?、というと離職率が高すぎることだ。私が灯油の配送で同行していた先輩も今月初めに退職してしまっていた

先輩は優秀ではないが、事故なく安全に配送を遂行する貴重な配送員だった。先輩の初対面の印象は厳しく細かなそうな人だった。印象と仕事ぶりは一致していて、老齢ではあったが、安全意識が高く驚くほど几帳面な人物だった。

配送ルートをしっており顧客とも顔なじみが多い人物なので、それが離脱してしまうとなると大きな痛手になる。この会社短期の離職が多すぎるので、飴の話題を出さないと優秀なパートナーほど退職してしまうのだ。この会社辞めて、どこか定時で上がれる正社員に転職したいに決まってる

会社の輝かしい未来像を業務委託のメンバーに語ってやる気を出させていたが、そんなに効果は持たないだろうな。会社の経営を重視するなら、業務拡大なんかよりも、中型免許保有者を囲い込むことに注力したほうが懸命だとは思う。人手不足はすでに深刻化しているし、去る者は追わずではすまないほど、離職者がでる損失は大きくなっている