今日は正社員君の横乗りだった。彼は私の同期だが社員なので目上の立場で、年下なのに優秀だ。ぶっちゃけあまり面識はなく大したことは知らなかったが
いいやつなので気が楽だったが、彼自身は私が思ったより深刻な悩みを抱えているようだ
残業しすぎて36協定を超過してしまい、サービス残業するように所長から強要されたと言われた。正社員君は面接のときは、週5、7.5時間労働の契約を提示されていた
しかし現実は週6日勤務、一日5時間残業しているそうだ。36協定では労使が合意する場合でも、月100時間以上残業してはならないとしている
正社員君は一週間に30時間残業しているので、一か月でおよそ120時間残業する見込みになる。そこでこの20時間はなかったことにして、サービス残業してほしいと、強面の所長から迫られているようだ。
相変わらず業務は早朝の巡回配送の仕事だったが、目的地に到着すると、正社員君に電話がかかってきた。残業しすぎていることを誰かに打ちあけ、労働基準監督署にどうやって相談したらいいかやり取りしてるようだった。
その相手は正社員君の父親で、お前の会社やばいんじゃないか?うちの運送業は労働時間すっごい厳しいから、すぐに帰るように追い出される。給料安いけど、仕事はずっと楽だよ、と電話口で言われていた。
本気で労基に相談するか定かでないが、業務中に長々と電話しているあたり、単なる冗談なんかではなさそうだ
正社員君は見た目はすっごい元気なのだ。しかし話している内容はすっごい深刻だった
家に帰れなくて、嫁との仲が険悪になってる。疲れすぎて、家帰って泣いていた。残業代未払いの証拠を残すために、勤怠画面の写真を毎回とっている。灯油のポリタンクを見ると吐き気がしてくる。健康面でも最悪で、一か月一度風邪をひいてる。
この前37度の熱を出して、病院に受診するように言われたが、インフルエンザじゃないからという理由で、風邪引いたまま出勤するように所長に命令されたそうだ
最近歯が死ぬほど痛くて、歯医者に行きたくてもいけないので、いっそ抜いてくれと雑談していたのも聞いていた。
正社員君は健康面でもメンタル面でもすでに働きすぎて限界に見えた。しかし見た目はすっごい元気でニコニコ愛想よくて、冗談なのか本気なのか全く分からない。単なる苦労アピールなのかもしれないが、無茶苦茶残業しているのは間違いないとは見ている
また意外な事実も知ってしまったのだが、正社員君は二児の父親だと思っていたが、二児のこぶ付きの女性と同棲しているだけらしい。二児の父親のように見えるが、ほかの男の子供なのだ。俺ならそんな女と子供の面倒なんてみたくないが、どうして正社員君はそんな生活に耐えられるんだろう
確かに左手の小指と薬指に二つの結婚指輪らしきものをはめているが、これがなんなのかよくわからない。普通薬指に一つだけのはずなのだが。気になったが、私は人付き合いが嫌いなので聞く勇気はなかった。