サトシとピーマンモンスター

駆け出し冒険者のサトシは、夏ピーマンに首を絞められていた
ピーマン:なんで俺から逃げようとする・・・俺には現代人が不足しがちなβ-カロテンがたっぷり含まれてるんだぞ?
サトシ:だって青臭くて苦いし・・・
テイザ:おいピーマンはヘタが弱点だ!むしり取れ!
サトシ:そ!そうか!
ピーマンのヘタを力いっぱいむしり取るサトシ
ピーマン:ギエエエ!
サトシ:はあはあ・・・危なかった。
テイザ:命拾いしたな。じゃあな
サトシはテイザという女のリザードマンの後姿を眺めていた。小さなしっぽがお尻の上で揺れる
サトシ:いけない!今日中にクエストを完了させなきゃ!
サトシは夏ピーマンの体をスライスすると、後ろのリュックサックに詰めた
リュックサックには色とりどりの野菜モンスターの肉片が詰まっている
サトシ:これをギルドに上納して、クエスト完了だ

野菜ギルド本部
サトシ:え!受け取ってもらえないの!?
ギルドマスター:そうだ坊主。クエストの内容を見てみな
サトシ:倒した苦手野菜モンスターを、白米と一緒に食えだと・・・
ギルドマスター:料理するしかねえなあ。それが出来なきゃ一生お前は駆け出しだ
サトシ:で、できらあ!
しかしサトシはどうすればいいのか見当がつかなかった

そこにさっき助けてくれたリザードマンの女が現れると、野菜をかごに詰めた
ギルドマスター:あいよテイザ!今日も美人だね!おまけしとくよ!
テイザ:ありがとう。今日の食材が足りなかったんだ
サトシ:お、お前!俺にクエストを手伝ってくれ!
テイザ:え・・・いや・・・
サトシ:頼む!俺は初心者なんだ!
テイザは断りたかったが、初心者には優しくしないといけないというNPCの決まりがある
テイザ:わかったよ。一緒にポンノの酒場に来てくれ。
サトシ:恩に着る!
テイザ:だけど食材運ぶの手伝ってくれよ。一人運ぶのは大変なんだ

ポンノの酒場のキッチン
鍋には水に浸したコメ。
包丁でニンジンの皮をむくサトシ
ベナ:テイザ、あいつはなんだミ?なんでキッチンにいるんだミ
テイザ:知らん。なんか料理させてほしいらしいぜ
サトシ:おい!俺は野菜が苦手なんだ!コイツをどうやって料理すればいい
ベナ:そのまんまくうミ。野菜は生でサラダとして食えるミ
サトシ:そんなことできるわけないだろ!俺は野菜が苦手なんだ
テイザ:野菜炒めにしたらどうだ
サトシ:そっそうか!

かまどには薪が用意してあるが、火を起こす道具がない
サトシ:くっくそ!火が起こせない
テイザ:しょうがねーな
テイザが薪の細かい火だねに指先を近づけると、小さな煙が上がった
サトシ:ひっ火が付いた!?どんな手品を使ったんだ!?
テイザ:よくある火の魔法だが
ベナ:中華鍋つかうミ。白米を一緒に炊くのをわすれるなミ
サトシ:す、すまない!NPCの諸君!

ベナの指示で油で手早く野菜炒めを調理するサトシ
ベナ:熱いうちに食うミ
サトシ:あ、ああ・・・
自分で作った野菜炒めを恐る恐る食べるサトシ
サトシ:うん・・・油で手早くいためたから、野菜の青臭さと苦みがない
テイザ:よかったなサトシ:ああ・・・あとは白米を食うだけだ・・・
サトシ:う!
ベナ:どうしたミ!?
サトシ:野菜炒めじゃ白米は食えない!!
テイザ:え!?
サトシ:俺は野菜をおかずに白米を食うなんて無理だ!肉とか魚じゃないと!
ベナ:しょうがないミ
テーブルに調味料の瓶を置くベナ
サトシ:何だこの白い粉は?
ベナ:化学調味料だミ。それを野菜炒めにかけるんだミ
サトシ:あ、ああ・・・
化学調味料を野菜炒めにかけて食べるサトシ
サトシ:な!なんだこの魔法の粉は!?塩コショウだけで味気なかった野菜炒めが、まるで肉野菜炒めのようだ!
ベナ:よくあるうま味調味料だミ
サトシ:こ、これなら白米が食える!ありがとう!これでクエスト達成だ!
テイザ:なんかわからんが良かったな