*このテキストはオリジナルSSで、実際のゲームとは無関係です。

主人公は外婚者の元軍人。平凡な生活を送っていたが、一人娘が不治の病にかかり、余命幾何もない。狼狽する主人公だったが、奇妙な噂を耳にする

「チェルノブイリ原子力発電所跡地に誕生した、ZONEと呼ばれる自由射撃地帯。そこにはアーティファクトと呼ばれる未知の宝石が出土するという。その中には、どんな病でも直せるというオアシスというアーティファクトが存在する。」その噂を耳にした主人公は、ZONEへの侵入を決意する。

軍隊時代のコネに「ZONEに入りたい」というと、今度はその知り合いの知り合いを紹介され、安いツアー旅行程度の賄賂を要求された。たったそれだけでトラックの荷台に乗せられ、ZONEにたどり着いてしまった。

右も左もわからない主人公は、さっそくZONEでエミッションの洗礼を受ける。すると、scar並みの超人的な能力を手に入れてしまう。ダッシュでzoneのさびれたバーにたどり着くと、怪しげな男たちが、命知らずな仕事を請け負っていた。主人公はシングル射撃で、ミュータントと悪いstalkerをヘッドショットで次々射殺。CoP並みに名声がうなぎのぼりに上がっていく。

チェルノブイリ原発

金もアーティファクトも集まり、ZONEが気に入った主人公だったが、オアシスを手に入れるという本来の目的を思い出す。しかし伝説のアーティファクトだけあって、ガセとしか思えない情報が飛び交っていた。

オアシスはZONEの最深部、チェルノブイリ原発にあるという。そこには願いをどんな願いもかなえるモノリスがあると噂されていた。当然それに頼めばどんなアーティファクトでも手に入るだろうが・・・

結局主人公の超人的な能力と、最高の装備のおかげで、いつも通りモノリス兵が闊歩するチェルノブイリCNPPに到達してしまう。

チェルノブイリ原子力発電所のがれきと化したドームの中には、輝きを失ったモノリスがたたずんでいる。主人公は険しい段差を乗り越え近づくと、モノリスのそばに一人の人影を目視する。生きている人間がこんなところにいるはずもなく、VSSのスコープで覗くとやはり人影はコントローラーだった。背中しか見えないが、Gパンはモノリスに向かってうつむき、黙祷しているように見える。

主人公はこの場で射殺するかどうか迷ったが、近づいてSGを使ったほうが弾の節約になると判断。コントローラーにかまわずモノリスに近づいていく。足音が聞こえるくらい近づいても、コントローラは座ったまま背中を丸めて反応がない。最大殺傷力となる射程に近づくと、突然脳裏に「待っていた」と聞こえた。コントローラーは背中を向けて無言で座ったまま。彼は脳に直接言葉を送っているらしい。

「お前がほしいものを知っている。主は、お前にそれを授けるように言われた」
「お前はそれを手に死ぬだろう。欲が孕んで罪を生み、罪が熟して死を生み出す。」
主人公は聞いていて、頭がくらくらしてきた。
「主から授かるのであれば、主の御心に適わなくてはならない」
「どうすればいい?」
「救いたいなら、すべてをささげよ」
「無視したら?」
「主は人を罰しない。しかし信じる者は救われる」

そこまで言うとコントローラは立ち上がり、モノリスに手を伸ばした。"愛されたい"とモノリスにつぶやくと、彼の体は金属のように光り輝いた。やがてその体が、液体のように溶けて流れてしまった。今度は凝縮し、握りこぶし大の石になった。この石の輝きは、間違いなくアーティファクトだった。モノリスは静かになり、何事もなかったように、空間はがらんとしている。

願いのパターン

コントローラの所持品をあさると、彼自身の経緯が書かれたノートが見つかった。あのコントローラは元モノリス兵で、マークドワンに施設の中枢を破壊されたとき、正気に戻った。モノリスが停止する直前にここまでたどり着き、焦っていて、モノリスに向かって情報が欲しいといった。するとなぜか自分はコントローラーミュータントにされてしまった。

現状把握、貴重品、脱出経路などの情報を入手したい、という意味だったが、わけがわからない。醜いミュータントの姿にされ、体は愚鈍でろくに歩くことができない。しかしなぜか疑問の答えが、まるで知っていたかのように明瞭に頭に浮かんできた。

モノリスは特定の単語に反応して、到達者をどう料理するか決定している。知恵、知能、情報という単語がでた場合、醜いコントローラにするようにプログラムされていたらしい。ほかの回答も気になると、すぐに情報が頭に流れ込んできた。

モノリスに登録されている単語は1万ほどだが、それから導き出される死に方のバリエーションは100種類にも満たない。意外と少ないが、どれも馬鹿げたものばかり。理想の異性の幻影を追いかけて転落死する、Fleshのステーキ肉を食う、wolfの代わりにたき火にされるなどが用意されていた。

しかしその中に唯一特筆すべきものがあった。愛されたい、ちやほやされたいという単語を発すると、到達者は貴重なアーティファクトにされてしまう。自分の死に方を悟に至る。ノートへの記述はここで終わり、最後に一文添えられている。"オアシスを持ち帰るのは、それを手に入れるより難しい"

主人公は思いもよらない自己犠牲によって、オアシスを手中にした。しかしそのコントローラーの言っていたことが気になる。"お前はそれを手に死ぬだろう"。

オアシスを持ち帰る

移動研究所にこのアーティファクトを持ち帰ると、もう大騒ぎ。
「ワシや。そこらでようわからんアーティファクト拾ったから、鑑定してくれ」
「こんなん見たことも聞いたこともない。ひょっとするとオアシスかもわからん。売ってくれ。いや資料として貸してくれるだけでええ!」
「ええけど、相棒が一目見たい言うとったから、そのあと渡したる。場所と状況も教えたるから、札束用意して待っといて。わしの名声知っとるやろ
「君なら安心やわ。待っとる。」
「ほな鑑定費」。

サイエンティストと嘘の駆け引きをして、本物らしいという確証を得る。ZONEでの冒険を切り上げて、脱出する時だと判断する

バーに戻った主人公。ZONEから出る方法をバーテンに尋ねると、「ZONEから脱出する場合、役員に袖の下を使う方法は使えない。今の時期なら、金と労力はかかるがガイドを雇って、警備の薄い境界を夜間横断する方法が良い」と言われる。腕の良いガイドを紹介するといわれ、その通りにする。

金は十分にあるので、惜しむつもりはない。恒例になった装備の点検を済ませ、barにいる顔見知りのstalkerに別れの挨拶をして回った(社会人として当然)。

いよいよZONEから脱出当日、ガイドを先頭に国境を目指し歩き始めた。主人公は装備も充実しているが別に何が襲ってくるわけでもなく、アノマリーをさけてひたすら歩くだけだった。ガイドのstalkerもこのルートは慣れているらしく、主人公は不安を感じなかった。

バッドエンディング

夜が来ると、野犬を警戒し、交代でたき火の番をしようと持ち掛けられた。主人公は先に寝袋に入って、少しでも睡眠時間を確保しようと眠った。ガイドはミュータントを警戒しAKを抱えて、たき火に向かって座っていた。

30分ほど経過し、主人公が寝息を立て始めると、ガイドは主人公をこともなげに射殺した。主人公が死ぬとヘッドランプを頼りに、慣れた手つきで所持品をあさり始めた。ポケットに装備が多すぎることで、ガイドの死体あさりは手間取っていた。

3分が経過すると、ガイドがヘッドショットされ即死した。闇夜の中、ヘッドランプを付けてたせいで、格好の狙撃的となってしまったらしい。ガイドは自分たちがつけられている可能性を全く考慮してなかった。直後あちこちで銃撃の応酬が始まった。

結局主人公の名声が高まるにつれ、標的とするstalkerも増えていたらしい。stalker達は態度こそ友好的だったが、裏で主人公を殺す計画を立てていた。オアシスをもって帰郷することは、すでに知れ渡っており、自由射撃地帯に入ったところで、それぞれ襲撃する予定だったらしい。主人公を見事仕留めたのは、バーテンから手配された偽ガイドだったが、もはやどうでもよい状況である

そのうち上空にミリタリーのヘリが現れ、地上斉射を始めた。オアシスを見せられたサイエンティストが、慌てて政府関係者に助力を要請すると、なんと特殊部隊が出動したらしい。あのコントローラーのメモ書き、"オアシスを持ち帰るのは、それを手に入れるより難しい"の意味が分かった

グッドエンディング

主人公が目を覚ますと、辺りはがらんとしたモノリスの前にいた。その手にはオアシスが握られている。あのコントローラが、自分が死ぬ経緯の幻覚を見せていたようだ。あのコントローラーは、"救うには、すべてを捧げよ"と言った。主人公にはその意味することが不思議と分かった。ZONEではうまく行き過ぎていた。だからいずれ、夢から覚めて、その償いをする気がしていた。

主人公はバーに戻ると、それぞれ派閥の顔見知りに一杯おごって語った。自分が不治の病の娘にために、オアシスを持ち帰ること。そして自分の持っているものと引き換えに、ZONEから脱出する援護を頼んだ。

dutyには自分の最高の銃(ガウスガン)。
freedomにはアーティファクト。
stalkerには最高のスーツ。
banditには有り金すべて

主人公は結局ZONEで集めた装備を、すべてここで差し出してしまう。それを見たstalker達は、主人公を真の漢だと認めた。banditは金だけ持ち逃げする算段だったが、他の派閥が団結しているのを見て心変わりする。ここで約束を反故にすれば、ほかの派閥をすべて敵に回しかねない。

いよいよZONEからの脱出するため、外界への境界を目指した。主人公が装備していた外骨格は、他のstalkerが着て、護衛され先行している。これを囮にして、主人公は別の境界から隠密脱出する計画だった。主人公には腕の立つガイド(SoCのOPに登場した、VSSもつstalker)が同伴。二人とも飛び切り足が速く、ぴったりのコンビだった。

たかがZONEから出るために、二分隊以上もの戦力を買う必要があったか?。しかし囮の一団から分離して程なく経過すると、そちらから銃声が起こり何者かと激しく交戦していることがわかった。主人公とガイドは境界を目指し、歩を早めた。

その時突如銃声がなり、主人公が倒れた。即座に草むらに伏せたガイドは、二名によるAKによる200m以内からの二連射銃撃だと判断。銃声から射撃された方向だけでなく、位置まで正確に測定できた。同時射撃でガイドと主人公を斃すつもりのようだが、こちらの歩が早かったのか、相手の腕が未熟だったのか、ガイドへの射撃は外れた。即座にガイドは伏せ、相手がいると思われる地点に、VSSで二マガジン分発砲すると、応射はなくなり静かになった。

ガイドは仰向けに倒れた主人公を介抱しようとする。サンライズスーツの防弾性能では、5.45弾を食い止めることはできず、弾丸は胸に侵入していた。手術が必要な重症であるのは間違いない。苦痛にゆがむ主人公の目から生気が抜けていく。

敵を倒したとは言え、周りの戦闘はより激しさを増し、今度はヘリのローター音が響いた。ミリタリーが掃射に来たのだ。もはや一刻の猶予もない。主人公はオアシスと、この時のために書いておいたメモを握った。震える手でそれを差し出されたとき、ガイドは言わんとすることが分かった。ガイドはそれらをつかみ取ると、わき目もふらずに走り出した。

夜通し走り続け、ガイドはついにZONEの外、主人公の自宅までたどり着いた。ドアベルが鳴り、主人公の妻が出てくるが、そこには誰もいなかった。ふと足元を見ると、光り輝く不思議な宝石と、その下に紙屑のメモが敷いてあった。メモには指で触られてくすんだ血の跡がついていた。メモにはここの住所と、一文添えられている。”二人を愛している。どうか幸せになってほしい”

主人公は結局、死ぬ運命を変えられなかった。しかし持てるものすべて、自分の命すら支払って、娘の命を救った。ガイドは疲れ切っていて、疲れた体を引きずって歩いた。全くわりに合わない仕事に、悪態をついた。それでも、ZONEの外で見る朝日は、見覚えがないくらい美しかった。