今日は灯油配送の業務の付き添いにいく仕事内容だった。

早朝雨が降っており、傘をもって出勤した。バスに乗ると前の座席に痩せた神経質な男が座っていた。やせた男のうなじで視界がふさがれるのが妙に不愉快だった。

曇り空から虹が見えた。虹はなんとなく幸運のシンボルとみなしている。希少で美しい自然現象だからだ。別に虹が見れて運がよくなるとは微塵も思ってないが、偶然虹が見れて運が良いとは思っている

少なくとも寺や神社で交通祈願のお守りを買うよりは、すぐに消えてなくなる虹を探したほうがはるかに有意義だと考えている。

事務所につくと、職人らしき人物から、灯油のスタンドから、給油ノズルで灯油配送ローリーに給油する

給油には長い手順が必要だが別段難しいことはない。ただ口頭で教えてもらわねばならないので、細かいミスは度々起こる。メーターが0になってないとか、給油量を図り間違えているなど

その後配送作業員のベテランの車に同乗して、実際に給油で移動した。灯油配送車は乗車スペースが運転席と助手席しかない。運転手の荷物で助手席が埋まっており、私はすごい狭いスペースに乗車していた。

先輩は一件気難しそうなおっさんだったが、割と気のいい人物で仕事がしやすかった。世間話が好きで話が長いが、嫌味な人物ではない。自分がガリガリで腕力がないことをすんなり理解してくれたのだ。親父と所長からはいつも力ねーなと叱られてばかりいたんだが。いつも一緒に仕事に回る親父は嫌味な人物なんだなと再確認した。

配送先はまだ夏なので主に厚木にある工場。トタン外壁の倉庫が並ぶ一画にあるタンクに、灯油を注入しに行く。倉庫ではポロシャツにチノパンのユニフォームを着たフォークリフトの作業員が行きかっている。別に夏場は問題ないが、トタンの倉庫作業は冬場寒いだろうな思った

その後熱海のリゾートマンションに給油しに行った。珍しいケースで、温泉のくみ上げ機が故障したので、灯油のボイラーを稼働させているらしい。すげえ量が必要で週に2000リットルの給油が必要だそうだ。大口の客が手に入ったと事務所は喜んでいた

今日は熱海も含めほとんど車の移動だった。助手席で景色を眺めるのが好きなので、楽な一日だった。観光地熱海の光景を初めて見た。熱海ビーチラインの岸壁に高い波が押し寄せる

起伏が激しく面白い景観だったが落ち着かない観光地に見えた。道がとにかく狭く、傾斜にびっしり高層マンションが立ち並んでおり、暮らすにはすごい不便な場所に見える。あんな狭く人通りの多い観光地に、重機で乗り入れるマンションの工事業者はとにかく苦労が多いだろうな

午後の昼食は熱海のセブンでのり弁当を買った。正直おかかがあんまり好きじゃなく、あげものばかりであまりおいしいと感じられない。つうか職人ってコンビニが大好きで、わざわざファミレスとかスーパーじゃなくてコンビニで飯買いたがるから困る。高くて量が少ないんだよコンビニ弁当。ファミレスなら広い店内で、ゆっくり飯食えるのに、なんでコンビニ行くんだよ

先輩はセブンのペペロンチーノにカップラーメンと唐揚げ棒が昼飯だった。本当に食いたいものばかり集めたメシで、さすが職人だと感心した。

今日は雨の予報で、傘を持って行った。が曇り空が一変して、午後からは天気がよくなった。帰りの高速も妙に道路ガラガラで、先輩の職人が雨にうたれずにすんで運が良いと感心していた。

自分が晴れ男で、ついでに虹を見たご利益かもしれないと思ったが、そういうオカルトを口に出すべきではない。運とか縁起といった迷信を信じるのは欲深く愚かな人間の典型であり、本当に敬虔で鍛えられた人間は決してそんなものは当てにしない

帰って事務所につくと、一日の伝票と車の点検票を長い時間かけて描いた。伝票というか日誌は、一日の走行距離と給油量、灯油タンクの残量、支払いの会計などを事細かく紙に書かないとならない。先輩の筆跡は非常に安定しており、いかにもベテランの作業員らしく尊敬してしまう。自分のガタガタですぐに崩れる文字とは大違いだ

非常に面倒な作業で、エクセルで記入できればかなり楽だろうなと思う。また給油の手順やこの手の伝票の書き方のマニュアルがないのが、いかにもガテンの職場だなと思った。

わざわざ書き方や集計マシーンの使い方を社員に一から教えてもらわないとならないのだ。別にそんなに難しくはないが、手順を覚えるのには何回も作業を繰り返して、間違いながら地道に覚えるしかない