職人の灯油配送に同行した。9月に入って徐々に忙しくなってきており、個人宅を何件か回った
灯油のノズル給油をやらせてもらったが、ホースの展開と縮小にそこそこ力がいる。ホースが太く、ノズル部分も重量がある
そして大事なテクニックとして灯油をこぼしてはならない。もったいないうえに中和剤で拭きとらないとならないからだ。ノズルからこぼさないように念入りに液だれを注いで、ノズルを上向きにする指導を受けた。給油ノズルは重いので、慎重にやれといわれると体力を消耗する
先輩からはなんどかあわてるなと注意された。慌てる理由もわかってる。自分は助手席に座ってるだけで役立たずなので、とにかくてきぱきこなして、先輩の邪魔をしないようにするしかない。だからつねに何か命令される前に、行動しないとでくの坊扱いされてしまう
飯はコンビニで塩にぎり三個をたべた。安くてカロリーがあるからだ。歳なのかこういう素朴な味付けのものがうまく感じる。おにぎりが安いスーパーよってくれよ。せまいの車内で食いたくないと内心思ったが、この手のおっさんはコンビニが大好きなんだよな
先輩は運送業の人間なので、職人ではないのだが、やっぱり変なところがある。灯油ローリーのエンジンを常につけっぱなしで、常に誰かが車内に残るように注意している。
例えば俺がコンビニにトイレに行こうとすると、わざわざ先輩は車内で待っているのだ。で俺が戻ってくるとようやく入れ違いで飯買うためにコンビニに行く。おれは速攻帰ってこないと先輩を待たせることになるので、常に急がないとならない
停車しているときは誰か人が残っている必要があるが、コンビニの駐車場でそんなことをする奴は見たことがない。なんか業務や運転の規則にのっとったものなのか知らないが、聞くと機嫌を害するかもしれないので、しぶしぶ先輩に従っている
業務はほとんど座ってるだけなんだが、時間とともに疲労感が蓄積し眠くて仕方なくなる。休み時間が一時間あったんだが、狭い助手席で座っているしかできなかった。全然休んだ気がしない
話好きな先輩とこの業種について世間話に付き合ったが、残業ばかりなので、普通は社員になる前にやめるそうだ。若い人がいないのは、もっとマシな仕事がいくらでもあるからだそうだ
日給は一万3000円と高いように見えるが、みなし残業代3.7時間込みで、個人事業主なので社会保障がほぼない。夏と冬は繁忙期で、36協定を超過する残業時間が確定している。(残業時間を少なく報告して対処している)。また休み時間もなく、個人事業主はそういった労働基準法が適用されないことを悪用した雇用形態になっている
バリバリの肉体労働で、責任も重い。ほかの仕事いけるような若いやつは来ないということだ
午後からの仕事では海老名の個人宅にも給油しに行った。海老名は厚木のような殺風景な場所で、高低差がない平野の狭い道路にトラックがいっぱい走っている。とにかく窮屈な地域で、建物がない場所はなぜか米の水田に埋めつくされており、空地や林と言ったゆとりのスペースは一切ない。
相変わらずだが個人宅は毎回うんざりするぐらい道路が狭くて、灯油のローリーの幅ギリギリで難易度の高いバック走行を求められる。こんな仕事したくねえな
先輩の話では相変わらず覚えることがいっぱいで、個人宅の正確な番地と、灯油タンクの位置、支払い方法などもすべて覚えておかないとならないそうだ
例によって人手が糞足りなくて、社員と所長がサービス残業で夜遅くまで配送しないと終わらないそうだ。誰が悪いというわけではなくて、社会のしわ寄せでこんな過酷な仕事になっていると想像している