2023年7月21日執筆

Watership Downという英国のウサギ映画を見た。1979年英国で放送されたアニメ映画となっている。

娯楽の少ない当時として、なかなかの出来なので、そこそこファンもいると思う。英国で語り継がれるというのは嘘で、youtube全編見れるわりにアクセスは少ない

マイナーな映画なので、レビューも少ない。吹き替え版があるそうだが、わざわざ買うやつもいまい。だからストーリーの解説してくれるサイトもない

まったく知らない映画で、youtubeでエンディングの動画が表示されて興味を持っただけだ。はっきり言うが実はこのレビューもこのウサギ映画をろくに見ないで書いている

最初にこの英語の評価を述べるが、非常に出来の良いガンバの大冒険といった評価。実はかわいい動物の冒険活劇物はたくさんあって、これからも定期的にアニメが作られるだろう。そのなかでも最もテーマ性が高い作品だと断言できる。

こういった動物の冒険活劇ものは、ピクサーも定期的に手がけている定番。かわいくてヒットした映画がたくさんあるが、テーマ製が希薄ですぐに消費されてしまう欠点がある。このウサギ映画は、その欠点を解消している唯一の映画となる

最初見たとき、陰気で宗教色の強い映画に見えた。不気味なウサギの絵面とショッキングな流血シーンが書かれるのだ。宗教的なモチーフの場面も多く、ディズニーアニメとは一線を画している

しかしよく見ると、ウサギのモソモソ動く姿と効果音が実にかわいい。このウサギのアニメーションは芸術の域に達する会心の出来栄えで、ウサギが大好きで、才能あるイラストレーターが、めちゃくちゃ気合を入れて書いたと想像できる

映画の内容は農場で暮らす非力なウサギ達が、理想郷を目指して旅立つと言うものになっている。作品のプロット自体は平凡だが、動物物のストーリーの中では一線を画している点がいくつもある

宗教色の強い内容で、ウサギたちが独自の宗教を持っている。実は宗教物のアニメは過去日本にいくつもあるが、あの忌まわしいオウム真理教のアニメもその一つになる。

しかし今作はキリストを賛美するような、いかにも宗教系のアニメでは全くない。原作オリジナルのウサギ宗教で、クトゥルフとかとまあ同じとなる。そのため既存の宗教へ入信を進めたり、来る大災害を煽るようなものではない

冒頭、弱いウサギたちがほかの動物達に狙われ、餌食となるのか、ウサギの達の宗教で説明される。このシーンいかにもおどろおどろしい場面のように見えるが、そうでもない。ちょっとかわいらしい絵柄で書かれている。

ぶっちゃっけ英語はヒアリングできないが、絵面だけで何が言いたいのかすぐに分かった。ウサギはかわいい生き物でみんなに愛されているが、爆発的に増殖して草木を食い荒らすのだ。それゆえ神はほかの動物に牙と爪を与えて、ウサギを襲うようにした

ウサギたちは次々蹂躙されるが、代わりにウサギたちに視力と脚力、聴力、穴を掘る能力を与えて逃げれるようにした。これでおよそ4分の冒頭シーンは終わりとなる。

このシーンを見て非常に驚いた。たった四分に満たないシーンで、ウサギがなぜ襲われるのか、それとウサギの習性がアニメを見るだけでわかるのだ。それも私のような英語わからないやつにも伝わるので、子供が見てもわかるはずだ。

絵柄がちょっとかわいいのも、ウサギがかわいくて、繁殖しすぎることを説明するために必然性がある。子供がウサギを保護しようとしたり、ほかの動物から守ろうとするのを戒める事ができる。ウサギはかわいいが、あくまで畑を食い荒らす害獣に過ぎない

宗教チックなのも実は合理的だとみた。子供になぜとしつこく聞かれたとき、神がそう作ったと言い逃れできる。本当に小さい子供は好奇心旺盛で、なんでも聞きたがる厄介な習性をもつ。

この冒頭のシーンだけでもめちゃくちゃ考え抜かれている

まだまだこの映画について書かなきゃならんことがあるが、もうめんどくさいなら、この動画だけみればいい。
猫「お前アホか!目の前で盗む馬鹿がどこにおんねん!」
鳥「ア ー!!」
俺「鳥お前、魚とろうとして猫にシバかれとるやないか!」
と突っ込みを入れて楽しめるだろう。以下は思ったことを箇条書きしたもの

ウサギたちはもちろん弱い。そして前述のとおり宗教を持っており、敬虔なところがほかの動物映画と異なる。ウサギが弱くて敬虔で、予知能力を発揮したりするのが、余計にかわいく見える

物語の冒頭は予知能力のあるウサギのファイバーが、災害を予知するところから旅が始まる。この辺サイトによって紹介の仕方が異なり、人間の開発を予言して逃避したと書いてあることもある。

人間の開発なら平成狸合戦ぽんぽこみたいに、開発するシーンを目の当たりにして、旅が始まるという流れになる。予知で始まるというところがなんとなく英国文学らしさを感じる。もちろん予知なので、長老には信じてもらえず、主人公達のグループと二分されることになる

災害を予知して旅が始まるとなると、主人公の冒険の動機が伝わりにくい欠点がある。ただ開発を目の当たりにして旅が始まるとなると、年老いたウサギたちも連れて行ってわざわざ作画しなきゃならなくなる。若者たちだけの冒険でないと、勢いがなくつまらないので、予知でもいいと思う

この予知という設定は実は終盤で生かされる。終盤ネズミたちの抗争が始まった場面で、犬を解き放ってけしかける打開策を、予知で思いつくからだ

この方法はウサギたちにとって、破滅的と言えるほどリスクの高い作戦だった。敵味方問わず犬にどんどん狩られていく。非常に面白いプロットで、怪物をあえて開放して、事態を打開するというシナリオは珍しい。

ファイバーの予言でこれを実行するのは素晴らしいアイデアだ。というのも普通思いつかないし、リスクが高すぎてとても実行できないからだ。自分や仲間がやられるリスクは高いうえに、ウサギたちにはもう犬を止める方法がない。

予知の能力をもった虚弱ウサギのファイバーは、仲間の一人としては個性的、かつシナリオで非常に使えるキャラクタだと思う。ガンバの大冒険には力が強い、頭がいい、足が早いなどの個性豊かなキャラがいるが、予知能力を持つ奴はいないのだ。

ファイバーが特にキャラクタとして有用なのは、虚弱設定を生かせる点にある。虚弱キャラに活躍できる役割は、予言者しかいない。しかし同種のキャラが創作物に出てこない理由も察せられる。 宗教色が強く、リージョン規制にかかりやすいのだ

Wikiの解説を見たところ、原作の設定がえらい緻密で、設定厨が英雄譚を書きたかったのだと見た。同じ英国出身のローズマリサトクリフのようなハードな冒険譚になっていると予想する。

ただこのアニメは90分しかないので、映画にするために全然違う内容になったのだ。設定厨がハードな英雄譚と言うべき原作を書いたが、うさぎ好きのアニメーターが90分の尺に収まるように書き直して、こんなアニメが出来上がったと推測する

その辺原作が好きな人には、このアニメにかなり不満を持っている気がする。ただこの映画のアニメーターは才能と情熱をかねそろえた天才で、不満はあったとしても、これ以上の映画は作れないだろう

でアニメーターが書きたかったものは英雄譚ではなく、田畑に出没して駆除されるうさぎへの弔いを書きたかったように見える。ウサギが弱く、やられるシーンがグロかったりするのは、駆除されるウサギのかわいそうな感じを表現しているのだ

だからこの映画は、動物は駆除しなければならないが、それがかわいそうだと思う人ほど刺さるんじゃないかと思う。ただこの映画は古典的な名作だけあって、道徳観は老練したものだ。単に動物がペットのようにかわいらしいから、としか考えてない幼稚な人にはこの映画の良さがわかるまい

この映画はのちに、1998にテレビアニメ版、2018年にネットフリックで3DCGアニメーション版が放送されている。それを聞いて察するが、あまり売り上げが見込めない原作で、製作費もそれほどかけられまい

特にテレビアニメ版はいかにもやっすい作画で幻滅するだろう。しかしさらにマイナーな幼児向けのゲーム版は、クオリティが一回り高いように感じる。キャラデザはテレビアニメと全く同じだが、ウサギが妙にかわいいのだ。

このクオリティならそんな文句ない気がするが、このゲーム版は一時間に満たないぐらいのボリュームしかない