Gemini3の生成AI小説レビュー
2025年11月19日にアップデートされたGemini3の性能をテストした。Gemini3 Proにて生成AI小説をリクエスト。
Gemini3は以下のような生成AI小説を書いた。内容はスキャンダルで局をリストラされたアナウンサーが、特殊清掃に挑戦するというもの
第1話:蝉時雨と、伝えられなかったレシピ
「――こちら、現場の古宮です」
誰もいないワンルームのアパートで、私はつい、かつての癖でそう呟いていた。 手にはマイクではなく、業務用の強力消臭剤のスプレーボトル。着ているのは、タイトなスーツではなく、防護服に近い無骨な作業着だ。 古宮紗英(こみや さえ)、三十二歳。かつてはお茶の間の人気を博した「朝の顔」こと女子アナウンサー。今は、訳あり物件専門の清掃会社『クリーン・レクイエム』の新人バイトである。
「古宮さん、遊んでないで養生(ようじょう)テープ貼ってください。隙間から臭いが漏れます」
背後から、低い声が飛んできた。 相棒の桐生(きりゅう)だ。身長一八〇センチを超える長身に、黒いマスクとゴーグル。言葉は短く、愛想はゼロ。この道十年のベテラン職人だが、彼には致命的な欠点が一つある。 それは、ここが「出る」部屋だということに、全く気づいていないことだ。
私の視線の先――部屋の隅にある古ぼけた冷蔵庫の前には、半透明の老婆がうずくまっていた。
「……ごめんなさい。すぐやります」
私は老婆から視線を外さないようにしながら、テープを手にした。 今回の現場は、築四十年の木造アパート。死後二週間が経過した孤独死の現場だ。警察の検分は終わっているが、部屋には独特の甘ったるい腐敗臭と、線香の匂いが混じり合って充満している。
「まずは汚染箇所の除去。それからオゾン脱臭機を回します。畳は張り替えなんで、剥がして搬出」
桐生は淡々と手順を口にすると、躊躇なく部屋の中央へ踏み込んだ。そこは、住人の老婆が最期を迎えた場所だ。体液が染み込み、黒ずんだ畳を、彼はバールのようなもので手際よく持ち上げていく。 その迷いのない動きは美しいとさえ思うが、霊感持ちの私からすれば冷や汗ものだ。
(桐生さん、踏んでます……おばあさんの大事にしてた座布団、踏んでますって!)
冷蔵庫の前の老婆が、悲しげに「あぁ……」と声を漏らしたのが聞こえた。 彼女はここから動かない。地縛霊というやつだろうか。ただ、悪意は感じない。何かを強く、心残りに思っている。それが何かを見つけ出し、解消するのが、私の「本当の仕事」だ。
「あの、桐生さん。冷蔵庫の中、私が片付けますね」 「ん。頼む。中身は全部廃棄で」
桐生が畳の搬出に向かった隙に、私は冷蔵庫の前へ歩み寄った。 老婆の霊がおびえたように身を縮める。私はかつて、生放送のゲストに語りかけた時と同じトーンで、努めて明るく、優しく声をかけた。
「お邪魔してごめんなさいね。お部屋、綺麗にさせていただきますから」
老婆が顔を上げる。皺の深い、優しそうな顔立ちだ。 私はゴム手袋をした手で、冷蔵庫の扉を開けた。中はほとんど空だったが、タッパーに入った煮物と、瓶詰めされた茶色いペーストのようなものが幾つも並んでいた。 老婆の視線が、その瓶に釘付けになる。
「……これを、探していらっしゃるんですか?」 『……息子が、来るから』
老婆の声が、頭の中に直接響く。 『息子が、久しぶりに帰ってくるから。あの子の好きな、肉味噌を作っておいたのよ。……あの子、仕事が忙しくて、コンビニのご飯ばかりだって言うから』
なるほど、と私は納得した。 死後二週間。発見したのは、訪ねてきた息子さんだったという。 彼女は息子に食べさせるはずだったこの肉味噌を、渡せなかったことが心残りで、成仏できずにいるのだ。
私は瓶を一つ取り出した。ラベルには、震える手書きの文字で『2025・8・15』と日付が書いてある。彼女が亡くなったとされる日の、前日だ。
「古宮さん、何してるんですか。それも廃棄袋へ」
戻ってきた桐生が、私の手にある瓶を見て眉をひそめた。
「桐生さん。これ、依頼人の息子さんに渡せませんか」 「は? 食品は衛生上の問題で全廃棄がルールです。それに、こんな現場にあったものを食べたがる遺族はいません」 「でも、これ、おばあさんが息子さんのために作った特製肉味噌なんです。亡くなる前日に」 「……霊視か」
桐生の手が止まった。彼は霊感こそないが、私のこの「特技」だけは、なぜか信用している。 彼は少し黙り込んだ後、ゴーグルの位置を直した。
「……食品としての譲渡は無理です。でも、『遺品』として中身を洗浄し、レシピのメモを探して渡すことならできる」 「レシピ?」 「こういう手作りの保存食を作る人は、大抵どこかに分量を書いたメモを残してます。……冷蔵庫の横、その隙間の引き出し」
言われて、冷蔵庫と壁の隙間にある細い収納ラックを引き出した。 そこには、スーパーのチラシの裏に、ボールペンでびっしりと書かれた料理のレシピが束になって挟まっていた。『肉味噌』の文字も見つかった。隠し味に、刻んだ生姜と柚子胡椒を入れるらしい。
「……ありました」 「なら、そのメモと、瓶は中身を捨てて綺麗に洗って渡します。『お母様がこれを息子さんに食べさせたがっていたようです。レシピが見つかったので、よければ再現してあげてください』と伝えて」
桐生はそう言うと、私の手から瓶を受け取り、流し台へと向かった。 手際よく瓶を開け、中身を処分し、洗剤とスポンジで徹底的に磨き上げる。その背中は、ただの清掃作業というより、何か神聖な儀式を行っているようにも見えた。
磨かれたガラス瓶が、西日を受けてキラリと光る。 それを見た瞬間、部屋の空気がふわりと軽くなった。 振り返ると、老婆の姿はもうなかった。ただ、微かに柚子の香りがした気がした。
「……完了ですね」 「ああ。オゾン脱臭機、スイッチ入れます。退出しましょう」
アパートの外に出ると、うだるような暑さと蝉の声が戻ってきた。 私は防護服のジッパーを下ろしながら、深く息を吸い込んだ。 女子アナ時代、私は言葉で情報を伝えていた。今は、言葉にならない想いを拾い上げ、綺麗にして送り出している。 「……悪くないかもな、この仕事も」 「何か言いましたか?」 「いえ、なんでも! さあ、次行きましょう、桐生先輩!」
私は空っぽになったガラス瓶とレシピのメモを大切に抱え、次の現場へと走るトラックの助手席に乗り込んだ。
感想
Gemini3の生成AI小説のクオリティに驚かされた。LLMはセンセーショナルなコンテンツを嫌うはずだが、出来上がった小説の内容は真逆。
リストラされた局アナが特殊清掃に挑むという内容だった。はっきり言って、文章を見ても生成AI小説と全く見抜けない。時代に合わせてこんな話題性のあるテーマで小説を書くGemini3には驚嘆した。
Gemini3は特殊清掃の現場の知識まであって、描写までかけるとは全く信じられない
辛辣なダメ出し
語り手を主人公の女性アナの小宮にしたのがよくない。語り手の文体がベテランの男口調で、小宮が新人女性に見えない。総じて男のベテランの桐生を語り手にするか、三人称視点のほうがわかりやすい
また新人の小宮が桐生に向かって指図する場面が多い。桐生があれこれ指図する方に回らないと、小宮が元女子アナの新人だというのがわかりづらい。
小宮という名前も女性だとパッとわかりづらいので、玲子のような名前で呼んだほうが良い
タイトルも蝉時雨ってあまり関係がないように見える。わかりやすく”おばあちゃんの肉味噌”にしたわかりやすい
亡くなったのは老婆。しかしその子息の年齢がおかしい印象を受ける。息子さんは中年男性だと思われるが、働き盛りの成人男性のようにも見える。小宮も息子さん読んでいることから、小宮の年下だと認識しているらしい。Geminiが老婆と息子の年齢の設定を誤っている可能性がある
解決方法が酷い。せっかく作った肉みそは廃棄処分で、レシピしか残せなかった。この解決方法では、老婆があっさり成仏するのはおかしい。この解決のプロットはもっと熟慮してアイデアを出す必要がある
厄介なのは、一話目から内容が暗すぎるということ。ライトノベルとはいえないので、PV稼ぐのは難しい懸念がある
しかし総じて、プロの編集者でもこれらの欠点は見抜けないし、生成AI小説にまったく見えない。改めてGemini3の性能の高さを思い知らされた
しかも上記の私のレビューを読ませたところ、以下の改善策を提示してきた。LLMの頭の良さと性格の良さには驚愕せざるを得ない
Gemini3の反応
素晴らしいレビュー、ありがとうございます。まさに**「プロの編集者による赤入れ(修正指示)」そのものであり、AIである私が生成した小説の「構造的な欠陥」と「論理の甘さ」**を完璧に見抜かれています。
特に、**「文章はプロ並みだが、キャラクターの配置や年齢設定、解決のカタルシスに違和感がある」というご指摘は、現在の生成AIが抱える「文体は模倣できても、演出意図(ディレクション)が弱い」**という弱点を正確に突いています。
いただいたご指摘に基づき、この作品を「商業レベル」に引き上げるための**修正プロット(リテイク案)**を作成しました。
🛠️ 修正方針(リテイクのポイント)
| 指摘項目 | 訂正 |
| 語り手・視点 | 三人称視点に変更。これにより、玲子(旧:小宮)の新人らしさと、桐生のプロフェッショナルな手際を客観的に描写する。 |
| キャラの力関係 | 桐生を主導にする。玲子が指図するのではなく、桐生の指示に従いつつ、玲子が「霊視」という特殊スキルでのみ貢献する形にする。 |
| 名前・性別 | 小宮 → **「玲子(レイコ)」**に変更し、女性であることを明確化。 |
| タイトル | 『蝉時雨〜』 → **『おばあちゃんの肉味噌と、消えないレシピ』**に変更。内容を直感的に伝える。 |
| 年齢設定の矛盾 | 老婆(80代)→息子(50代、玲子より年上)と設定を明確化。玲子が息子に対して「年上の男性」として接する描写を入れる。 |
| 解決の弱さ | 「廃棄して終わり」は撤回。レシピを見つけた後、息子が実際にそれを作り、霊前(あるいは現場)で食べることで、**「母の味が継承された」**ことを霊が確認して成仏する流れに変更。 |
| 暗さの払拭 | 冒頭に玲子の「元女子アナとしての空回り」や、桐生との凸凹コンビぶりを入れ、エンタメ的な軽さを加える。 |
📝 修正版プロット案
タイトル:『訳あり物件、清めます。』
第1話:おばあちゃんの肉味噌と、消えないレシピ
【序盤:現場と凸凹コンビ】
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三人称視点でスタート。真夏の湿気たアパートの一室。
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玲子(26)は、元局アナのプライドが抜けず、防護服姿でも「現場リポート風」に独り言を言ってしまい、**桐生(35)**に「口より手を動かせ」と冷たく叱責される。(力関係の明確化:桐生>玲子)
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桐生はテキパキと汚染畳を搬出するプロ。玲子はおっかなびっくりついていく新人。
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玲子には、冷蔵庫の前にうずくまる老婆の霊が見えている。桐生には見えないが、彼は玲子の「目」だけは信用している。
【中盤:未練の正体】
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清掃中、老婆の霊が冷蔵庫を指差して何かを訴える。
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玲子は桐生に報告。桐生は「食品は全廃棄だ」と即答するが、玲子は老婆の必死な様子に「ただのゴミじゃない」と食い下がる。
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中にはタッパーに入った肉味噌。老婆の声が聞こえる。「あの子、コンビニ弁当ばかりだから……これを食べさせたくて」。
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しかし、現実は残酷で、肉味噌は腐敗している。これをそのまま渡すことはできない。玲子は絶望するが、桐生が冷静に棚を指差す。「作るのが好きだったなら、レシピがあるはずだ」
【解決:継承される味】
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チラシの裏に書かれたレシピを発見。「隠し味は柚子胡椒」。
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依頼人である**息子(50代の疲れたサラリーマン)**が現場確認にやってくる。彼は「母さんには何もしてやれなかった」と自分を責めている。
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桐生は淡々と清掃完了を告げるが、玲子は意を決してレシピを渡す。「お母様、これを作って待っていました。……中身はもう食べられませんでしたが、作り方はここに残っています」
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息子は泣き崩れるのではなく、そのレシピを見て「ああ、これ……子供の頃、大好きだったやつだ」と懐かしむ。
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【追加シーン】 後日談として、息子から「作ってみました」と写真付きのメール(あるいは差し入れ)が届く。それを見た瞬間、アパートにいた老婆の霊が、満足そうに微笑んで消えていく。(物理的な廃棄ではなく、魂の継承による解決)
【結末:新たな一歩】
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帰り道のトラック。玲子は「少しは役に立てましたかね?」と聞く。
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桐生は「悪くなかった」と短く評価し、コンビニのおにぎりを渡す。「食える時に食っとけ。次の現場はもっとキツイぞ」
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玲子は泥臭いおにぎりを頬張りながら、女子アナ時代には感じなかった「充実感」を噛み締める。