タイラント戦争は終結していなかったが、12使徒とトリニティが交戦することはなくなった
トリニティと米国の支配力が弱まり、世界は混沌とした状況となっていた
セラ博士は民衆側と会合を設けて、民主主義的な主導権の掌握を目指していた
一方ナトラはトリニティの上層部(資産家)を自分の配下にしようと、恐喝じみた密会を繰り返した
そんな折12使徒側に大事件が起こってしまう。

セラ博士とナトラがバールの監視を怠っていたのだ
戦闘がなく休眠中だったアルマジロがバールに吸収され死亡。さらにそれを阻止しようとしたフローラもバールに吸収され死亡
バールは急速に成長し、閑散とした砂漠都市バーストウに忽然と姿を消した
そのあとはバールは、ブロブというホラー映画のようにひそかに人々を襲った

スライム状のバールは夜な夜な下水道から民家にはい出てくると、ペットや老人、家畜にまとわりつき吸収。徐々に巨大化していった
次にバールは民家の天井やクローゼットに隠れ、人が寝るのを待った
人が寝たところを天井からのしかかり、全身にアメーバをかぶせてあっという間に犠牲者を溶かした
クローゼットに隠れているバールはトラップのようなもので、クローゼットをあけると勢いよくバールが流れでて、バールの体液だらけになって犠牲者は溶かされた

人々は一体何に襲われているのかすらわからなかった。突然アメーバとかしたバールに襲い掛かられたと思うと、跡形もなく吸収され、バールは下水溝に逃げた
犠牲者の悲鳴が上がり、バールに溶かされた犠牲者の衣服は残り、何事かと調べに来る。
バールは隠れ潜み、そうやって好奇心で近づいてきた人間も虎視眈々と食らっていった
監視カメラにも犠牲者たちがスライムのようなバールに襲われ、溶かされている様が映っていた。しかしこれを見た警察は何者か、一体どうすればいいのか見当もつかなかった
やがてバールはバーストウの人間をほとんど食らいつくし、残りは警察に保護を求めて逃げた。
街の建物に外傷はないのに、だれも住んでいないゴーストタウンになった。

セラ博士はその無人と化したバーストウのニュースを見ていた。間違いなくバールの仕業だ
犠牲者が増えるたび、バールはより増殖し、さらに犠牲者が増えていく
自分があの化け物を研究し、野にはなってしまったことなどとても明かせない
バールは12使徒の切り札で、救世主的な存在ではあったが、同時に制御不能な諸刃の剣だった
とりあえず様子を見るしかない。下手にしゃしゃり出ると、自分がバールを暗殺に使っていたことを感づかれるかもしれない

バーストウの人間を食らいつくしたバールは増長して大胆になった。
水道管でつながっていないロサンゼルスに引っ越しを開始したのだ。
その様子は衛星カメラにとらえられ、まるで黒い波のようなものが大きな道路を伝って移動している。
人々はそれを見て恐怖のどん底に突き落とされた
ついにバールを倒すために軍隊まで出動したのだ

軍隊はバールが道路を伝ってロサンゼルスに向かっていることを知り、殺人スライム封鎖マニュアルを実行した
土嚢と車両を街につながる道路を封鎖し、かつ押し寄せる殺人スライムことバールを侵入させない作戦だ
同時にバールに向かっている自家用車が入らないように封鎖する効果もある。
これは全うだ。バールが向かっているような街に民間人を入れるべきではない
一方バールは黒い液体の雪崩のように街に向かって押し寄せてくる。
体積が増えるにつれてバールという液体が流れるスピードも増している。
小さいときは時速3kgの速度でしか移動できなかったが、巨大化した今では20kgの速度が出ている
相対する封鎖部隊の軍人たちも、黒い液体がどろどろと近づいてくる光景はさぞ恐ろしいだろう

土嚢で作られた封鎖バリケードに近づくと、バールは液体がごとく土嚢に押し返された
しかしバールは単なる洪水や雪崩のような、自然災害ではないので物理法則は通用しない
意思をもった殺人スライムなのだ。黒いどろどろした液体が土嚢をじりじり登っている
それを見た軍人たちは、慌てて消防車のホースのようなもので石灰を噴射した。
軍隊は極めて準備が良い。液体のバールに凝固剤は有効だと考えて準備していたようだ
殺人スライムは凝固し、土嚢を乗り越える進行が食い止められていた

だがバールも土嚢が超えられないとみると、どんどん横に広がり拡散して、土嚢が詰まられていない隙間や道路の端を目指した
バールとしては移動が速いから、道路伝いを通って移動したわけで、森や川が通れないわけではない。
車両よりはるかに走破力はあり、人間が通れないようなところですら、バールはやすやすと侵入できる
バールは土嚢を迂回したり、隙間を通り抜けたりして、封鎖バリケードを突破して侵入し始めた
今度は後方の軍隊が止めていた車両に徐々に近づいてきて、軍人たちを恐怖させた
バールは単なる土砂や洪水ではなく、ちょっと車両や人体に付着しただけで大惨事になる。
何せ殺人スライムなので少量でも付着すると、皮膚や柔らかい繊維をどんどん溶かしていくのだ
慌てて軍隊車両は撤退を開始した。軍隊は街を守れず、非難されるだろうが、セラ博士は的確な判断だと思った。
あの殺人スライム相手に人間ができることはほとんどない。何せ火器が効かないので、戦力自体が無意味になる

付近の車両とドローンが逃げ出すと、次いで戦闘機が飛んできてMOABが使われた
米軍はとんでもない大胆なことをする。核兵器についで強力な爆弾が使ったのだ
殺人スライムバールは、MOABで付近の道路ごとまとめて爆散した
道路に大穴が空き、吹き飛んだ瓦礫の山が広範囲に散らばった
その後米軍は歩兵が出てきて、石灰をまいて殺人スライムを跡形もなく消した

セラ博士は驚いた。米軍は完璧にバールの駆除に成功したのだ
米軍は一応夜間外出禁止令を出した。どこかにバールが隠れているかもしれないのだ
これからMOABで破壊した道路の大規模な復旧作業もあり、多くの車両がいきかいするはずだ
しかしそれから数日後、また人々が夜な夜な消えた。
爆散したと思われたバールは蒸気や細かい粒になって、都市の下水溝や屋根の裏に隠れて移動していたのだ
軍隊が出動して、MOABまで使った。これから復旧の段取りもしていたのに、バールをせん滅することはかなわなかった

本来であればバールが潜伏するロサンゼルスから、人々は非難しないとならない。
しかし大きな都市となると、勧告してもすべての人員が避難してくれるわけではない
家財や家を手放すことが惜しくて残る人が必ずいる。そしてスクワッターという居留守を狙った不法占拠者たちの存在だ
空きやにはスクワッターが住み着くし、そしてそれを阻止するために避難ができない
都市にはバールが潜伏しており、成長を阻止するために避難させないとならないが、住民たちは避難してくれない
米軍はもう手の施しようがなかった。かといってバールを放置できない。
ロサンゼルスの人と食料を食いつくしたら、どれだけバールが強大になるか想像もできない

いよいよ米軍は最後の手段を使った。核兵器を都市に投下したのだ。
セラ博士としても米国はそれしか手がない、という認識だった
バールもろとも米国第二都市は灰になってしまった

しかしバールはそれでも死んでなかった
爆破の衝撃は細かな液体になって吸収し、高熱で気化した
そのあと冷やされたバールは雨となって世界中に降り注いだ
セラ博士は核爆発でバールの7割は消滅し、大損害を受けたと分析していた
しかしバールは攻撃されるたび進化しており、核兵器の爆発でも死滅することはない
それどころかバールは単一の巨大なスライムではもはやない。
分離してそれぞれが意思をもって人を襲うようになっている
陸路はものすごい危険で、空路と海路はまだ安全だ。
トリニティの幹部たちは自家用機を持っているので、庶民たちをしり目にバールから空路から安全な場所へ避難できる
しかしバールは世界中の工作地帯にも出没し、田畑を食い荒らしている
新たに作物を育てようにも、いつバールに襲われるかわからない。世界中が徐々に食糧危機に陥っていたのだ
世界最高の資産家であるトリニティの幹部たちですら、絶望が蔓延していった

バールは瞬く間に世界中に広がって、人類が築き上げた都市を無人のゴーストタウンに変貌させた
衛星から見ると無人になった、都市の光がどんどん消えていく
バールはもはや殺人スライムや破壊神を超越し、文明の灯すら消してしまう、”灯を消すもの”と呼ばれた

なおこの間セラ博士は全然出番がなかったが、バールが自分が作った殺人兵器であることをばれるのを恐れてのことだ
長いパニックホラー上映会が終了して、今頃になってあの冷酷な女社長ナトラと相談すべきだと思いたった