深夜のNVR医務室
リクライニングベットで孤独に眠るサトシは、不思議な夢を見ていた
隻腕の小さなリザードマンの少女と、恰幅の良いライオンの獣人が、切り株に座って語り合っている
テイザ:人はなぜ未来予知を恐れるのか?
オーウェン:くじを想像してごらん。未来が予知できる人間がいて、それにくじを引かれたらどうなる?
テイザ:当たりをすべて引き抜かれてしまう
オーウェン:その通り。人はもし奇跡の力を得たら、幸福をすべて自分のものにしてしまう。みんなそれを恐れている

早朝のNVR医務室
リクライニングベットで目をさますサトシ
サトシ:ここどこ…
トントン
ドアをたたく音がすると、サトシは上半身を起こした。
ジョルノ:気が付いたようだな
サトシ:俺はどうなった…何が起こったんだ…
ジョルノ:話はあとだ。しばらく安静にしていろ
サトシ:ああ…
サトシがぼんやりとうなづいた
ジョルノ:のどが渇いただろう
水が入ったガラスのコップを手渡そうとするジョルノ
サトシ:あ…
サトシは指に力が入らず落としてしまう
ガラスのコップが垂直に地面に落下する
ジョルノはとっさにコップを空中で拾おうとした
しかし間に合わずコップが地面に吸い込まれていく
ジョルノ:!?」
時間が消し飛んだ。そんな奇妙な感覚を覚えた
次の瞬間コップが何事もなく地面に直立している
ジョルノ:そんな馬鹿な…
ジョルノはガラスのコップを取り上げて動揺していた
あの高さから落としたら衝撃で砕けて割れるはず
しかしよく見てもヒビ一つ入っていない
水は全く漏れていない
これがサトシの能力なのか?
ジョルノはサトシのほうを向き直ると、サトシは上半身を起こしたまま寝息を立てていた

昼のNVR
料理当番のトリッシュがキッチンでパスタをゆでている
NVRの庭では、サトシのリハビリをジョルノが監視。
ミスタは透き通るプールの横で、プールサイドチェアに寝ころんでスマホをいじっている
久々の快晴で、眼下に青い海と緑の崖にそびえたつパラソルが見える。

サトシは半袖の医療用パジャマを着ていて、風でパタパタと布地が揺れる
サトシ:何か絶対かわせないような攻撃ってない?
ジョルノ:あると言えばあるが
サトシ:どんな
ジョルノ:ウォーター。水をぶっかける魔法だ
サトシ:やってみて
ジョルノ:ウォーター!
ジョルノがサトシを指さすと、空中から大きな水の塊が降ってきた
バシャ!
ジョルノ:なに!?全く濡れてない!?
サトシに水の塊を浴びせたはずなのに、サトシは足元しか濡れていない
ジョルノ:何もしてないのに濡れてないぞ!?何をしたんだ!?
サトシ:時間を消し飛ばした
ジョルノ:は?
サトシ:水がぶつかる瞬間の時間を消し飛ばした。だから濡れなかった
ジョルノ:意味が分からないんだが
ミスタ:キングクリムゾンってやつだろ?
ジョルノ:なんだそれ?
ミスタ:FPSでハイピングとか、ラグってると時々時間が消し飛ぶことがある
ジョルノ:時間が消し飛ぶってどういうことだよ?
ミスタ:俺に説明しろと言われても困る
ジョルノ:AI説明しろ
AI:タイムスキップが適切だと思います
ジョルノ:どういう効果なんだ?
AI:サトシさんは水が命中する瞬間だけ、自分をなかったことにしました
サトシ:そうなんだ…
ミスタ:まあとにかくサトシは何されても絶対に死なないってことなんだろ?
ジョルノ:頼もしいな。じゃあ次は最も危険なクエストに挑戦するとしよう
サトシ:どうしてそうなるの…