NVR執務室
ジョルノ:推薦人どおり君の鑑定士の実力は確かに噂通りだった。しかし…
サトシ:しかし…
ジョルノ:もっと戦闘で役に立つようにしてもらいたい。アイテムの鑑定だけならNPCでもできる
サトシ:でも俺はモグリーンの弱点をちゃんと教えたよ
ジョルノ:ミスタも言っていたが、あれでは役に立たないアドバイスしかできなかった。そういわざるを得ない
サトシ:う…
ジョルノ:そこで君はちょっとしたガチャに挑戦してみる気はないか?
サトシ:ガチャ?
ジョルノ:そう。すごく簡単だよ。君が選ばれし者ならSランクスキルに目覚める
サトシ:まじで!?そのガチャいくら!?
ジョルノ:ガチャ費用なんだが…金ではなく命を賭けてほしい
サトシ:え、命!?どうゆうことなの!?
ジョルノ:いや…ちょっと言い過ぎた。手軽にSランクスキルの獲得に挑戦できる。ただしちょっと痛い。そんなガチャだ
サトシ(ジョルノ態度がおかしい…ガチャと言っているがこれ絶対やばい奴だ。断るべきかもしれない…
ジョルノ:どうかな?君みたいな金のないC級鑑定士にはまたとない絶好の機会だと思うが?
サトシ(まてよ…テイザの予言では、俺はSランクスキルに目覚めるらしい。なら外れることがないガチャってことにならないか?…じゃあ受けるのが正解ってこと?)
サトシ:俺にそのガチャ受けさせてくれないか?
ジョルノ:よし。じゃあそこに立ってこっちを向いてくれ。うん。その位置がグットだ。そのまま決して動くんじゃあないぞ。狙いがそれるかもしれないからな

バシュッ!
突如サトシは背中に衝撃を受けた。
サトシ:え…?」
胸に視線を下すと、奇妙な矢じりが自分の胸から飛び出ている。
サトシは背中から心臓に向かって奇妙な矢で撃たれていた
サトシは床に、横向きにうずくまって崩れ落ちた
ミスタ:楽勝すぎて反吐が出るぜ
ドアの暗がりから、クロスボウを持ったミスタが姿を現した
ミスタ:どうだ俺の完璧な射撃は?心臓にドンピシャだ
トリッシュ:クロスボウじゃ自慢できないでしょ?
ジョルノは横向きのサトシの瞳孔反応を調べ、心臓の鼓動音を確認した
ジョルノ:完璧に死んでいる。矢に選ばれなかったらしい
ミスタ:わりいなサトシ。でもお前がガチャなんか挑戦するからいけないんだぜ
トリッシュ:所詮C級鑑定士だったわね

ジョルノは横になったサトシの遺体を、まじまじと見つめていた
棚から救急箱をサトシの横において、中からガーゼと包帯を取り出し、ハサミを手に取った
ミスタ:おい何やってるんだジョルノ?
ジョルノ:心臓は貫通されているし脈拍もない。完全な死亡と判断し、矢を回収する
サトシのシャツをハサミで切り始めた
ミスタ:おいリーダー。せっかちすぎるんじゃないか?
ジョルノ:絶対に矢は回収しないとならない。なら早いほうが良い
ジョルノはサトシを自分のほうを向けて寝かせると、裸の上半身と矢を観察した
矢じりがジョルノのほうをむき、突き刺されたサトシは人形のようにピクリともしない
ジョルノ:ふむ…
今度はサトシを背中を向けるように横たえると、ジョルノのほうに矢の羽が向けられた
ジョルノ:引っ張って抜くしかないようだな
ジョルノは深呼吸した
足元のサトシを足で押さえながら、矢の羽を力いっぱい引っ張った
ズボ!
勢いよく矢が抜かれ、ジョルノの顔に血が飛び散った

ジョルノは血まみれの選ばれし者の矢をフローリングに置いた
トリッシュ:う…
ジョルノは血がこれ以上噴き出ないように、包帯とガーゼを取り出して、サトシの裸の上半身に巻き始めた
ミスタ:いきなり矢を引き抜くなんて、荒っぽいことすんなリーダー
ジョルノ:どうせサトシは死んでいる。何をしたって問題ない
ミスタとトリッシュは、ジョルノの手際が良すぎることに呆然としていた

ジョルノ:さて…セワシさんになんて伝えるかな。せっかく推薦してくれたのに
ミスタ:そこまで考えてなかったのか?ダンジョンの中で事故死したことにすりゃいいだろ?
ジョルノ:そうだが、もっともらしいお悔み考えておかないとならない
トリッシュ:とっととサトシを捨てに行きましょうよ
ミスタ:とりあえずチームからキックしたほうがいいんじゃないか?こいつが勝手な行動して、ダンジョンで事故死したことにする
トリッシュ:C級鑑定士なら、そんな死因で誰も詮索しないでしょうね

ジョルノたちに無視され、横たわるサトシ
突如サトシの周囲にUIウィンドウが表示される
AI:心拍停止。管理者権限により、緊急蘇生プロセス開始。試行1/3
突然サトシの胸がビクンと撥ねる
AI:試行2/3
突然サトシの胸がビクンと撥ねる
AI:試行3/3
突然サトシの胸がビクンと撥ねる
サトシ:ゴフ!ゴフ!
サトシは口から血を噴出した
トリッシュ:!?」
ジョルノたちはサトシの方を振り返った
ミスタ:おいおい生きてんのかよ!
ジョルノ:馬鹿な…絶対死んでいた…。心拍停止から即呼吸再開なんてありえない
トリッシュ:生きてるってことは、サトシは矢に選ばれたってこと?
ジョルノ:ともかく担架を持ってきて医療室に運ぼう。ここに寝かせておくわけにはいかない