冒険者ギルド職業相談所
求人検索用のパソコンつきの個別席があり、冒険者同士が他愛ない失業話に花を咲かせていた
ナローニアではチームローテションやジョブローテションを推奨しており、失業に悲壮感はまったくない
サトシは職業相談カウンターで、冒険者ギルドNPCに職業相談していた
サトシ:鑑定士って求人ありますか?どこのギルドも入れてくれないんですが…
職員:鑑定士の求人募集はちょっとないですね…
サトシ:えなんで!?
職員:だって普通RPGのパーティーとかで、鑑定士なんて入れたいと思わないですよね?
サトシ:鑑定士って弱いから、ソロもできないんだけど
職員:そういうサポート職業だから仕方ないですね
サトシ:じゃあどうすんの?何もできなくて、詰んでるんだけど!
サトシはカウンターをたたきつけて、怒りをあらわにした
職員:あ、あなたにぴったりの仕事がありますよ!
サトシ:え、どんな!?
職員がカウンターからパンフレットを取り出して見せた
職員:スライム鑑定士
かわいらしい二匹のスライムのイラストが描かれている
サトシ:え…なにそれ?
職員:スライムの雄と雌を見分ける仕事です
サトシ:…スライムに性別ってあるの?
職員:あります!触ってみて弾力で性別がわかります
サトシ(こいつは何を言ってるんだ?)
職員:これすごい高度な職人芸で、熟練した職人じゃないと見分けられないんです
サトシ:俺はスライムに触ったことすらないんだけど…
職員:心配いりません!鑑定士はステータスオープンで、スライムの性別が即わかっちゃうんですよ!
サトシ:…スライムの性別わかってなんかいいことあるんですか?
職員:ペットにしたスライムの性別にこだわる人がいます
サトシ:ああスライムをつがいにして繁殖させるんだ
職員:いえ、スライムは雌雄同体なので、性別は無意味です。内部的に設定されているだけです
サトシ:え…じゃあなんでスライムの性別を調べるの?
職員:飼い主の趣味ですね、ただの…
サトシと職員は無言のまま対峙していた
サトシ(スライム鑑定士の仕事は何かおかしい。インチキの匂いがする)
サトシ:そもそも触ってスライムの性別ってわかんの?
職員:いやわかんないです
サトシ:えなんで!?職人芸でわかるって言ったじゃん!?
職員:職人とかフカシしてるだけです。実際は雄とか雌とか適当に言ってるだけです
サトシ:???スライム鑑定士っていったいなんなの?
職員:よくわかんないけど、需要があるんです。鑑定士は本当にスライムの性別を鑑定できるので、すごいと思いますよ
サトシ(スライム鑑定士ってインチキな上意味ないじゃん。でも仕事がないからそうも言ってられない)
サトシ:…時給っていくらぐらいですか?
職員:このお仕事は時給10ナロンですね
サトシ:10ナロンって時給100円じゃないですか!?生きていけるわけないって!
職員:そもそもスライムの雄雌調べるメリットがないので、それはしょうがないですね…
サトシ:そんな仕事するぐらいなら、引退したほうがマシだ!
職員:あ、サトシさん!
サトシ椅子を蹴り飛ばし、泣きながら冒険者ギルドから出ていった