ドラクエ7で最も語り草になっているのが、キーファの永久離脱。主人公にとって頼りになる兄貴分だが、仲間と家族を捨て去り、自らの意志で旅立ってしまう

どれほどの衝撃か例えれば、ハッサンがムドーを倒した後、実家の大工を継いでしまうに相当する

キーファの設定

キーファは主人公の幼馴染で、兄貴分的存在。グランエスタード城の王子で、16才の若者。やんちゃで好奇心旺盛な性格。自らの身分を堅苦して嫌っており、いたずら好きで有名だった。

一方ガキ大将的な包容力と行動力を備えた人物で、若輩ながら城の人々に慕われている。いずれグランエスタードの王として、国を次ぐことを皆が期待していた。その折には、ピョートル大帝のようなひとかどの人物になったかもしれない

キーファも王国を愛しているが、その器量からすると、のどかで退屈な場所だった。

旅の踊り子にひとめぼれ

六つ目の冒険の世界は、往年の闇の世界を連想させる夜だけの世界だった。そこでユバール族という踊りと音楽を愛するキャラバンにであう。彼らは封印された神を復活させるため、旅しているという。

キーファはそこの精霊の踊り子、ライラにひとめぼれ。怪我をしたライラをかばい、二人きりで付き添っている間、いい仲になる。結局ユバール族の今回の神を復活させる儀式は未遂に終わる。苦難の末、神の祭壇にたどり着いたが、まだ神を復活させる時ではなかったらしい。

主人公たちの役目は終わり、次の世界に旅立つ。 しかしキーファはユバール族とともに、旅することを決意する。 ライラ達を守るため、ユバール族の戦士になるという。

この後キーファは二度とグランエスタードに戻ることはない。結局主人公たちは両親への別れを、体よく押し付けられた格好になる。グランエスタードにいく度、キーファがいなくてさみしいといわれ続ける。

挙句キーファに投入した種はすべて無駄になってしまうし、種泥棒といわれるのも無理はない

キーファの焦り

キーファはグランエスタードの王子であり。城を継ぐという大事な使命を持っている。それをほっぽりだして、神を復活させるとかいう、ヒッピーまがいの得体のしれない集団についてってしまう

しかしグランエスタード王子の身分など、地方領主みたいなもので案外つまらないのかもしれない。また、ユバール族もキテレツな存在だとは言い切れない。この世界では、封印とか伝説の何かを守る謎の人物がそこらにいる。

我々プレイヤーの目線から見ても、勇者とか伝説の存在に比べ、どっかの王子など取るに足らない。実際キーファもこう言ってる。

「お前(主人公)がうらやましかったんだぜ。お前のウデにあるそのアザ。お前もなにか運命をせおったヤツなんだろう。それにひきかえ、オレはただ王子って身分に生まれついただけの男だ。

これについて、キーファは鋭すぎる。主人公の腕にあるアザは、実は水の精霊の紋章である。主人公の正体は、伝説の海賊シャークアイとどこかの王女アニエスの子孫。

生まれも特別中の特別で、水の精霊の加護で、マーレの母体に移し替えられた。いわゆる古の勇者的存在で、伝説の武具をすべて装備でき、難解な古代文字を無学で解読できる。

それに比べれば、キーファの身分など取るに足らない。つまりキーファが離別を決意したのは、主人公のあまりにもすごすぎる出自に焦りを感じて、と言えなくもない。

大きすぎるキーファの損失

キーファの離脱は、仲間がいなくなって寂しい、どころか戦力的にも大きな損失になる。重要な戦士が一人減ってしまって、三人パーティーを余儀なくされる。しかもドラクエ7は難易度が高くて、ダーマ神殿やグラコス戦など難所が続くのだ。

せめて「代わりが見つかるまでいてくれ」とか、「主人公の旅は世界を救う重要な冒険なんだから、わざわざユバール族についてかなくてもいいだろ」思う。

しかしキーファを弁護すれば、ユバール族とは後半まで再会できないため、キーファが護衛につかなければ、ライラもろとも滅んでいたかもしれない。

結局キーファの不在は最後まで尾を引く。伝説の英雄メルビンに加え、アイラというキーファの生まれ変わり的設定をもつ女性が仲間になるが、重装備ができる戦士はいないまま。しかもこの二人話すことが平凡すぎてつまらん。マリベルを見習え

暗い別れ

キーファが旅で出会った踊り子に一目ぼれして、駆け落ちして別れるのは構わない。キーファらしい若気の至りだし、ストーリーの転機になる。

キーファはちょっと頼りになりすぎるので、離別するのはよいプロットだと思う。ストーリーが一転して暗くシリアスになるので

しかしそのあとの展開について、未完成な印象を受ける。前述のとおりキーファがユバールについていく必然性に乏しいし、残されたグランエスタードの人々はずっとどんよりしている

この後、エンディングでキーファからの手紙が届くが、それを見ると余計に暗い気持ちにさせられる。主人公たちはもう世界を救ったのに、キーファはいまだに暗い世界で、険しい旅路を続けている。主人公が伝説の勇者で、世界を救った英雄になったことなど、キーファに知る由もない。

キーファのそのあと

構想段階では闇落ちしたキーファがラスボスになる予定だったそうだが、そこまでする必要はない。ジャンと同じく、壮年のキーファに再会するイベントがあれば十分

しかし後のDS版でもキーファについてはイベントが加筆されることはなかった。DS発売前に散々期待されてたのだが、対して変わってない。

ドラクエ7はテキストのクオリティが極めて高いが、一方シナリオではキーファのその後と、神の唐突な登場が汚点となる。