レビュー

このレビューは賛否両論といわれるPS版ドラクエ7を対象としたものである。テキスト、マリベル、難易度が評価できるとてつもない労作だが、フラグ立てと石板集めがめんどくさすぎる駄作。これが私の今作の評価である

フラグ立て作業の難易度は歴代一

戦闘以外の作業ではシリーズ一難易度が高い。まず始まってすぐ主人公とキーファは退屈なエスタード島から脱出するため、石板の神殿に入ろうとする。神殿にはいるカギを見つけるには、エスタード島の住人と残らず会話せざるを得ず、一時間かかる。そしてその神殿内部も敵こそ出ないものの、結構難しめのダンジョンになっており、突破まで一時間。合計二時間かけて、ようやく最初のスライムと戦うことができる。

その後も新しい村に行くたびに、村人とあらかたはなさないとイベントが進まない。村人のセリフが比較的面白いのが救いだが、解きADV並みにフラグたてが厳しい仕様である。

悪名高い石板集め

フラグ立てと並び悪名高いのが石板集めである。今作では石板のかけらを集めて完成させないと、次の冒険の舞台に進むことができない仕様になっている。この石板のかけらはイベントアイテムとして、町やダンジョンなどの要所に置かれている。入手は難しくないが、たった一つでも見逃すと、先に進めなくなってしまう。取り逃すとおおきな時間の浪費となるため、どんな村やダンジョンでもしらみつぶしに調べていくしかない。これを一つ大陸を復活させるたびやらさせるので、ものすごいめんどくさい

当時ネットがない時代なので、石板が見つからずゲームが進まなくなって投げ出すケースも数多くあった。序盤から石板あつめは意地悪で、グランエスタード城の深部にわざわざ隠してあるうえ、石板の台座までの道のりが異様に長く、意図的に時間を浪費させられるクソゲー仕様である。

このゲームのプレイ時間はおおよそ70時間かかるが、その半分は会話と石板集めに費やすことになる

戦闘難易度は歴代三位

最も難易度の高いドラクエといえばFC版の2と3がある。ファミコン時代の超絶難易度だが、それに次ぐ難易度なのが今作である。前作SFC6も敵が強めだったが、今作はそれを上回る。序盤からかなり敵が強く、蘇生費用が高いためデスペナルティが大きい。

山賊やヘルクラウドはドラクエでももっとも全滅したボスとして有名である。ネットで攻略がてにはいる今では剣の舞とどとうのひつじで簡単に進められるといわれているが、そういった前知識なしだと苦戦は必至。私もグラコス前で主人公が遊び人のまま転職できなくなり、絶望的なくらい全滅させられた。

戦闘は古典的ながら楽しめるが・・・

戦闘は当時から見ても化石のようなコマンドバトルで、さらに特技の氾濫で改悪されていると思っていい。呪文と特技が多すぎで選ぶのが面倒、作戦は機能しておらず、魔法使いは呪文を使うなを強要される。職業は没個性で特技を取得するために渋々上げるだけ。

しかし難易度は労力をかけて調整されており、戦闘とレベルアップが楽しめる。PS版はのちのリワーク版では削除されたセリフも読めるし、戦闘や謎解きも歯ごたえがある。戦闘はちょっと難しすぎると思うが、ネットで情報が出回っている今ならちょうどよい難易度だ。しかし会話と石板集めがめんどくさすぎて、とても耐えられないだろう

一話完結型の短編シナリオ集

今作は過去にさかのぼり、魔物に滅ぼされた人々を助けていく、というストーリーになっている。これによって一話完結型の短い物語が連続するシナリオとなる。この方法の場合シナリオのすり合わせをする必要が減り、複数のシナリオライターを参加させやすいという利点がある。多くの開発者が参加する今作にうってつけの仕様といえる。しかし問題もあって、登場人物が多すぎるため、プレイヤーは物語を覚えていられない

この一話完結型のシナリオは、ゲームのものとしてはクオリティが高い。魔物が人間に理不尽すぎる呪いを毎回かけてくるため、話は暗くなりがちだが、大体主人公が敵を倒して解決してくれる。物語のバリエーションを持たせようと苦心したあとがあり、お使いも少ない。皮肉にも一番面白かったのが、悪評高いレブレサックのシナリオである。村を救ったはずの主人公が、村人たちの偽善で悪者にされるという意外な展開を、違和感なく描けている。人間の心の醜さを描くという、言うは易いが難しすぎる展開をよくかけたものだ

一方メインシナリオのほうもまあまあの完成度を誇る。退屈なエスタード島から好奇心で冒険が始まるくだりが良く、そこからキーファが離脱する場面でピークを迎える。がそのあとは尻すぼみになる。唯一面白いマリベルが途中離脱し、加入するガボ・アイラ・メルビンともに没個性。しかも主人公の出生の秘密、神・精霊・魔王はどれも存在感が薄く、唐突に表れた感が否めない。

しかし総じてゲームのシナリオとテキストはボリュームを考慮して、JRPGでは最高峰のクオリティと評価できる。今作は話が暗いとか、ラスボスが唐突とかいつまでも批判されるが、結局これをこえるJRPGのシナリオは登場しないだろう。

マリベルのためにある会話システム

今作では移動中に話すコマンドを使うと仲間と会話できる。これが恐ろしくテキスト量が多く、ことあるごとに会話が変わる。しかしセリフが多すぎてどうでもよいようなセリフばかりなっている。唯一セリフが面白いのはマリベルで、それ以外のセリフは聞く必要がない。