ユリアン
「死食の日のことを思い出した。妹がすぐに死んで、悲しくて泣いた」
エレン
「あの年はとにかく大変だったことしか記憶にない」
ユリアン
「エレンは偉かったよ。いつもサラのために食べ物探してた」
エレン
「妹のためなんだから当然でしょ。トムのおかげだよ、シノンのみんなが死食を越せたのは」
ユリアン
「俺はあの時トムが憎かった。金持ちだから食い物に困ってないと思ってた。でもあとでエレンから聞いたんだ。トムが家の蓄えをみんな配ったって。あいつまだガキだったのに立派だった。」
トーマス
「そうでもない、叔父に叱られたんだ。苦しいとき、分け与えてこそ真の友情だと。そういわれて備蓄をみんなに配ろうと思った。親父には叱られたけど、ベント家の男なら当然さ」
ハリード
「いい話じゃないか。備えあれば飢え死にしなくて済むってやつだな。・・・で、これからどうすんだ?過去が変わるとかいってたが、何ともない
ユリアン
「・・・アビスに行くしかない。サラを助けるんだ」
モニカ
「ユリアン!」
エレン
「あ、あんたは無関係でしょ!サラはあたしが一人で助けにいく!」
ユリアン
「俺は妹に何もしてやれなかった。もうそんなの嫌なんだ。」
トーマス
「二人とも無茶だ。アビスには四魔貴族の本体がいる。しかもアビスはやつらの領域。もっと強くなるはずだ」
ユリアン
「・・・なあハリードどうすりゃいい?あんた俺よりずっと強いだろう。アイツらに勝つにはどうすりゃいい?」
ハリード
「・・・無理だ。あきらめろ、俺は勝てない戦はしない主義だ。しかし・・・」
トーマス
「しかし?」
ハリード
「5対1なら案外なんとなるかもな。」
トーマス
「え?」
ハリード
「どうなんだ?トム?お姫様?」
モニカ
「え!?」
ユリアン
「お願いだみんな!力を貸してくれ!サラは大事な仲間だ!」
トーマス
「・・・やれやれ。ユリアンは言い出すと聞かないからな。抜け駆けはずるいぞ二人とも。僕も仲間にいれろよ」
モニカ
「・・・」
ハリード
「モニカ様は月術が大変達者でいらっしゃる。厚かましい願いとは存しますが、私ども農民にお力を貸していただけると大変心強いのですが・・・」
モニカ
「私が・・・?」
ハリード
「俺たちがここまで来られたのは、モニカ様のお力があってこそでございます。」
ユリアン
「お願いだモニカ!」
モニカ
「・・・でも・・・兄さまが・・・」
ハリード
「俺たちはあんたら兄弟の命の恩人なのに、その割に報酬が少ないと思ってたんだよな・・・命がけだったんだぜ?」
トーマス
「モ、モニカ様が来てくれれば心強いのにな!」
モニカ
「わ、わかりました・・・ロアーヌの領民を助けるのは、領主の務めです。あなた方が命を賭してくださったように、兄に代わって報いるよう努力します・・・」
エレン
「モニカ様!本当にありがとう!」
ユリアン
「よし!みんな、最後のアビスゲートに行くぞ!」
トーマス
「おー。」
エレン
「・・・でもハリード。あんたはいいのかい?まさかサラが気になるわけじゃないでしょ?」
ハリード
「おれはこいつ(カムシーン)で暴れたいだけだ。雑魚ばかりで退屈していたところでな」
エレン
「本当に?」
ハリード
「本当だ。それに世界を救ったんなら、お礼に国の一つぐらいくれるだろ?」
エレン
「おめでたいやつ。ま、あたしも人のこと言えないけど」
ハリード
(・・・ファティーマ姫、お許しください。あなたのために使えなかった命を、あの者たちのために使います・・・。)