過去作の凄腕エージェント、ゾーヤ、ザック、そして主人公ジェントリーを加えたポイズンアップル計画の活躍を描く。暗殺者の飛翔で最強ヒロインであるゾーヤがCIAに加わったため、それの大活躍を描く豪華作。
暗殺者の飛翔と同じくオールスターで、前述に加えてスーザン、ハンリー、しかも相変わらずフィッツロイが登場する。またかという感じはあるが、ロンドンにつてがないので、フィッツロイを出すしかないんだろう
作者が作家として天才を超えた実力を持つ人物なので、私ごときではストーリーや場面検証を追うことすら難しい。しかし非常に長編なエンターテイメント作なので、あらさがししようと思えばできる。
ゾーヤが5回も捕まっている
- ゾーヤはヴァージニア州グレートフォールズのCIAの隠れ家に監禁されているところから始まる。一応捕まって自由に出れない状態
- ロンドンのテリー・キャシディのオフィスに侵入したところを、フォックスに待ち構えられて拘束
- ベリャコフの仲介で父ザハロフに会いに行き、予想通り拘束される
- ネス湖の三五キロメートル西の山頂にある、廃教会に陣取るザハロフに会いに行き拘束
- ファイブアイズ会場にザハロフに会いに行き拘束
しかし全て自発的に拘束され、ほとんど独力で脱出している。小説を通してゾーヤの拘束と脱出シーンがあちこちあって、またか思う
ザハロフにとってゾーヤは最愛の娘なので非情にはなれないが、それが原因で四回も逃げられる。しかも毎回大損害を与えられ、重要な情報を奪取されてしまう
ザハロフが甘すぎるというわけではなく、ゾーヤを一流の敵工作員だと評している。しかしそれでも過小評価で、ゾーヤはジェントリーと並び最強キャラ
ゾーヤは暗殺者の飛躍でも三回拘束されており、そういうスパイだと思うしかない。
スーザンの変節
今作ではスーザンは非合法作戦に辟易して、元の出世街道に戻ろうと策を弄する。なんとジェントリーを射殺して、ポイズンアップルをとん挫させようとする
しかしもともとスーザンは、いやいや非合法作戦に加わったわけではない。CIA副長官のジョーダン・メイズを自ら抹殺し、ジェントリーのハンドラーになることも拒んだわけではない。
スーザンはジェントリーのハンドラーとしてもうまくやっており、ジェントリーのおかげでエーゼス・ハイ作戦を大成功に収める。ジェントリーに感謝こそすれ、憎んだりするほどではないように見える
ハンリー自らも、スーザンは頂点に上り詰めるとまで言わしめるが、今作の設定では数々の作戦に成功したのにも関わらず、出世できなくて嫌気がさしているようだ。スーザンの設定はこれまでと大きく異なっている
これはCIAとジェントリーが仲良くなりすぎると面白くないので、わざと対立するように改変したのかもしれない
しかし最後にジェントリーを個人的な理由で射殺しようとするのはやりすぎて、二人の関係が修復できるとは思えない。
ジェントリーにとってもスーザンが自分を殺そうとしたことは、絶対にないがしろにできない。カーマイケルのように陰謀があると推測するのが自然で、いつものジェントリーなら、CIAとは縁を切って二度と姿を見せないだろう
今作のスーザンはジェントリー、ゾーヤ、ザックを活躍させるためなのか、無能なシーンが多い。作者はスーザンをどういった扱いにするつもりなんだろう。
汚名を返上する続編が出るのか、それともフェードアウトするのか、気になるところだ。
今後の伏線
作者はきれいにいままでの伏線を回収しており、ゾーヤ関係の伏線はほとんど使い切った。ちゃんと書きすぎていて、伏線があまり残ってないように思える
あるとすれば前述のスーザンと、前作暗殺者の潜伏に登場した悪役、ドレスクラぐらい。ドレスクラは出番が多いわりに珍しく生き延びている。元々再登場させる構想だと思われる
さすがに過去作のヒロインのジュスティーン、エレン、ラウラはもう出てこないだろう