ナローニアオンライン運営開発室
サトシがNVRで、選ばれし者の矢で貫かれる10分前
明るいオフィスで、アダムと吉田がオフィスチェアに座っていた
吉田「ちょっとアダムいいですか?ナローについて相談あるんですが
アダム「ナロー?何だっけ
吉田「選ばれし者の矢っていう名前のアーティファクトです。内部的にはナローって名前でしたよね?
アダム「あーそうそう。ナローがどうしたの?
吉田「ナローのアイデア自体は面白いと思うんです。でもあれでSランスキルを開放するには懸念がある
アダム「どんな
吉田「収益性の問題です。ナローはガチャに成功すれば、無課金でもSランスキルが手に入る。
アダム「うん。無課金にチャンスを与えるのはいいと思うんだけど
吉田「Sランスキルってナローニアの目玉コンテンツなんです。それを無課金に配ってしまうと、逆に課金するコンテンツがなくなってしまう
アダム「うーん…
吉田「次にもう一点。ナローで心臓を貫くってまずいと思うんです。でガチャに外れた場合、そのまま死んじゃうじゃないですか?未成年とかがプレイすることを考えたら、レーティングに抵触する可能性がある
アダム「それはあるね
吉田「ナローは回収して、Sランスキルの実装を見直したほうがいいかと
アダム「確かにそうだな…ナローって今どこにあるんだろ?
吉田「え?アダム自分でアーティファクト作って、トラッキングしてないんですか?
アダム「うん…
吉田「AI、ナローってアーティファクトどこにある?
AI「情報検索中…セカンドシーズンのレイドボスのカーズがドロップしました。どのプレイヤーが持っているかは調べられません
アダム「あれただのアイテム扱いだから、検索できるわけない
吉田「あんた何やってんですか?ちゃんとID振って追跡できるようにしないとだめじゃないですか。今すぐ探したほうがいい
アダム「探せって言われても…
吉田「アダムの責任なんで自分で解決してください。じゃ俺は忙しいんでこれで
退出する吉田

一人取り残され、頭を抱えるアダム
アダム「くそ…どうすんだよ
AI「NPCのベナからアラート!テイザと関係が深い、サトシというプレイヤーの安否願う。
アダム「サトシの情報を表示して!
AI「サトシさんのプレイヤー情報を表示します
アダム「サトシって人、今HP0じゃん!?何が起こってるの!?
AI「詳細不明。2分前に心拍停止した模様
アダム「ちょっとAI、このサトシを至急に蘇生できる!?このままじゃ本当に死んじゃう
AI「今なら心拍再開の応急処置で済みます。実行しますか?
アダム「実行して!管理者の命令だ!
AI「サトシさんを対象に、蘇生プロセスを実行します…

AI「蘇生プロセスによりサトシさんの心拍を再開させました。救助を要しますが、現状誰かに介護されているようです
アダム「あぶねー…本当に死ぬところだった
AI「今ゲームの動作とは無関係に蘇生しました。あとで問題視されるリスクがあります
アダム「わかってるけど、ベナの要求は無視できない。テイザが赤き竜を召喚して、ナローニアが崩壊しかねない
AI「プレイヤーだけでなく、GMにも問題視される可能性があります
アダム「AI、ちょっと気になるんだけど、サトシ君はどうして死んだの?
AI「不明です。サトシさんはNVR(ナローニアバーチャルリゾート)にいると思われます
アダム「え!?NVRで死んだの?あそこはただのリゾート空間だから、事故とか戦闘ないでしょ?
AI「そうです。NVRで負傷や死亡のレポートは今までありません。
アダム「どうしてサトシが死んだか調べられる?
AI「無理です。NVRはプライバシーを重視したプライベートルームなので、ユーザーの監視や傍聴は開発者の我々にもできません
アダム「何が起こってるんだよ…ナローもサトシもどうなってるのか全然わからない