ポンノの酒場
青き野犬のリーダーのセワシが、ヨシオとマホリンに肩を担がれて現れた
セワシ「み、水を…
テイザ「おいあんたどうしたんだ!?傷だらけじゃないか!?
マホリン「席開いてないかしら?打ち合わせをしたいの
テイザ「病院行くのが先だろ!?
ヨシオ「金欠なんだ。察してくれ
テイザ「奥の席に行け。水と包帯を持ってくる
ヨシオ「恩に着る
男たちがセワシたちの姿を横目に見ながら談笑している
シンジン「くすくす…セワシさんも大変そうだな
男「貴重な僧侶を追い出すなんて、セワシの野郎もどうかしてる
男「聞けばその前に鑑定士を一人追い出したそうじゃないか
男「あんなリーダーのいるチームなんて誰も入りたがらねえよ。自業自得だな
ウサギのベナがその光景を遠目に見ていた
ベナ「サトシ…お前はどこでなにしてるんだミ?
NVR内のジョルノの執務室
記入用紙がおかれ、その上に重しのように小さな革袋が置かれている。
ジョルノ「今日は給料日。それが君の取り分さ
サトシ(銀貨10枚ってとこか…まあ俺の評価なんてこんなものか…
革袋は小さいが、手に取るとずしりと重い
革袋の中身をあけてみてサトシは驚いた
サトシ「金貨!?初めて見た…
ジョルノ「金貨10枚が君の給料だ。正当な額だと思うが
サトシ「ああ…多すぎるくらいだ…
ジョルノ「中身確認したら、サインしてくれ。それから例のポーション代は来月につけておく。どうせ金欠なんだろ?
サトシ「どうもありがとう…
これからだす話が切り出しにくくなり、サトシは顔が暗くなった。
サトシ「俺を黄金の風に推薦したのはセワシなのか
ジョルノ「ああ。欠員が出て困っていたところ、セワシさんが紹介してくれた
サトシ「セワシとは知り合いなのか
ジョルノ「うん。あの人は古参だからな、顔なじみも多い
サトシ「あんたいろいろセワシについて知ってるのか?最近青い野犬はどうなってる?
ジョルノ「なんだか落ち目だという噂だ。まあ君を追い出した自業自得だな
サトシ「そうか…俺はそろそろ青い野犬に帰ろうと思ってるんだ
ジョルノ「なに!?なぜだ!?君を追い出した奴らだぞ!?
サトシ「セワシは俺を育ててくれた恩がある。それに青い野犬のほうが居心地がいいしな
ジョルノ「正気か!?あの底辺チームに加わっても、君に何のメリットもないじゃないか?
サトシ「俺はエンジョイ勢だから、気楽に遊べるチームのほうがいいっていうか…
ジョルノは腕を組んで、一瞬考えこんだ
ジョルノ「なるほど。君は屑だな」
サトシ「なにィ!?」
ジョルノ「Sランク鑑定士にまで育ててやった恩を忘れて、今さら黄金の風を捨てるのか?せめて後任が見つかるまで働くのが筋だろう?」
サトシ「く…」
真夜中のNVR。ジョルノの執務室
サトシはログアウトし、ジョルノが座り、ミスタとトリッシュは執務机の前で立っていた
ジョルノ「サトシのやつがうちを抜けて、Cランクの青い野犬に戻りたいらしい
トリッシュ「ちょっとどういうことなの!?Sランクのうちに入ったばかりでしょ?
ミスタ「引き留めたほうがいいんじゃないか?
ジョルノ「そうなんだが…サトシのやつセワシに恩があると言って聞かない。
ミスタ「あいつエンジョイ勢だったのか。となるとどうにもなんねえか
ジョルノ「しかしもっと大きな問題がある
トリッシュ「どんな?
ジョルノ「サトシが抜けたらうちはSからAランクに落ちる
トリッシュ「まってよ!サトシが抜ける前に戻るだけだから、Sランクを維持できるでしょ?
ジョルノ「ナローニアのSランクはNo1ギルドの称号だ。ほかのギルドが最強になったら自動的に明け渡すことになる
ミスタ「…まあうちがSになったのも、前リーダーのブチャさんがいたからだしな」
ジョルノ「もうブチャさんはいないし、サトシに代わるプレイヤーをスカウトするのは不可能に近い。たぶん次はサトシが入った青い野犬がSランクに昇格すると思う。
トリッシュ「Cランクの青い野犬がSに昇格するわけ!?
ジョルノ「サトシにはそれぐらいのポテンシャルがあると思う。そうなるとうちはAランクに降格する。Sランクの特権も維持できない
ジョルノ「有望な人材を引き抜くのが難しくなるし、このNVRも維持できないだろう
ミスタ「クソ…
ジョルノ「懸念はそれだけじゃない。サトシは選ばれし者の矢の存在を知ってしまった
トリッシュ「結局どうするわけよ?リーダー?
ジョルノ「そこで、取り急ぎサトシを始末しようと思う。誰にも知られないように。それで当面の問題はすべて解決できる
トリッシュ「口封じと移籍阻止を兼ねて殺すってこと?本気なの?
ミスタ「…俺はリーダーの考えに賛成だ。俺はPKしてみたかったんだ。そしてPKする必要がある相手がいる。ほかに賛成する理由がいるか?
ジョルノ「トリッシュは?
トリッシュ「まあ確かにそうね…面白そうじゃない?
ジョルノ「じゃあ決まりだ。物分かりが良くて結構
ジョルノはクエストボードを開くと、ポチポチして詳細を確認した。
なるべく人目が付かない場所で、人気がないクエストが良い
該当するものがすぐに見つかった。ナローニア近郊のサビレタ鉱山のモグモグトリオ討伐クエスト。難易度はD
僻地で報酬も少ないので放置されている初心者用クエストだ
ジョルノ「明日は土竜退治のトレーニングということにしよう
トリッシュ「そしてトレーニング中にサトシは事故によって死ぬ、ということね…
ミスタ「人間を撃つのは久々だぜ…
ジョルノはクエストの承諾ボタンを指で押すと、赤色の受注済みの表記に変わった
一体だれがこのクエストを受けたか自分たち以外知らないし、サトシの死体も簡単には見つからないだろう