NVRに一人帰還してきたサトシ
サトシ「ただいま。誰かいないの?
返事はなく静まり返っている
サトシは玄関のスリッパを取り出してはくと、フローリングの上をぺたぺた歩いた
崖上特有の風のぉぉという音と、時々窓枠がカタカタという音がかすかに聞こえる

突然アラームがなって、サトシはびっくりした。
誰か帰ってきたと思ったが、自分のパーティーメッセージだった
〈ほかのメンバー不在により、あなたが黄金の風のリーダーに任命されました〉
サトシ「なんでだよ…?

誰か帰ってないのかと思い、セキリティパネルから入館履歴を調べた
自分がここに来る直前の記録が一件ある。さらにそのすぐ後に退出している
サトシは侵入者がいたのかと思いぞっとした。がすぐ思い直した
たぶんアダムがいっていたGMのことで、選ばれし者の矢を回収しに来たのだ
つまり自分以外の黄金の風のメンバーは、誰も帰還できなかったのだ

曇り空の午後だったが、シェアハウスは薄暗く恐怖を感じた
サトシは大型テレビをつけると、適当なyoutubeチャンネルを再生して、音量を大きくした

サトシは腹が減っていたので、リビングで食べ物を探した
キッチンテーブルの上に開封済みの箱入りクラッカーがあった。
リビングの大型冷蔵庫を開くと、中はほとんど空だった。
が、紙に包まれたチーズと、パック入りのオレンジジュースだけ入っていた
デバックルームで水しか飲んでなかったので、パクパク平らげた
目の前にyoutubeのチャンネルが再生され、サトシの顔に光が反射するが、全く見ていない
サトシはカロリーを補給しながら、考え事を実行に移すか考えていた
ジョルノたちはサビレタ鉱山で、自分に何かしようとしていた。
彼らがいない今、それを調べる最大のチャンスだった

サトシは薄暗い廊下をスリッパでぺたぺた歩き、ジョルノの執務室の前に来ていた
ドアは閉まっていたが、サトシが目の前に来るとガチャっと音が響いた
リーダー権限で開いたのかもしれない

執務机の上のノートパソコンから、チームチャットログを眺めた。
このログは新入りの自分では見ることができなかったが、リーダーになったことにより閲覧可能になった
サトシは昨日、深夜のジョルノたちのチームログを見てぞっとした。
自分をクエスト中の事故に見せかけて、始末しようとするメッセージが記録されていた
もっとスクロールすると、自分が入る前に、前リーダーが選ばれし者の矢を実験し、死亡しているいきさつ
最後に自分が前チームの青い野犬から、黄金の風に、リーダー同士の同意により、移籍していることが分かった
つまりセワシは自分を追放したように見せかけて、裏では自分を黄金の風に推薦していたのだ

サトシは考えることがいっぱいあったが、薄暗い執務室にいるのが怖くなった
隣の部屋から、テレビから流れる明るい笑い声がして、引き寄せられるように向かった
リビングのソファーに座ると、調べものも終わって、することが思いつかない
リビングを見回してもがらんと開放的で、ホテルのように生活感がない
黄金の風の三人は全員ミニマリストで、リーダーが潔癖症だったためだ
時刻は今午後の四時だった。このままだとどんどんあたりは暗くなっていく
サトシは久々に予定がないので、ポンノの酒場にウェイトレスのテイザを会いに行こうと思った
しかし本音は誰もいない家に一人で残るのが怖かったのだ

サトシは立ち上がって、テレビのスイッチを消した
退出パネルのスイッチを推し、玄関で汚れたスニーカーに履き替えて外に出た
玄関を閉めるとガチャっという音と共に、シェアハウスにオートロックがかかった。
サトシは振り返ってシェアハウスを眺めると、モダンな外装は暗く威圧的に自分を見下ろしている
この家にも、そこに住む人々にも親しみを感じたことは一度もない
道路は行きかう車のヘッドライトが光り、サトシは歩道を足早に歩いていく
サトシの背後には、主のいない家だけが重々しく取り残されていた