2017年11月1日 設備管理職業訓練卒業後35才の冬
特定派遣の営業から最初に紹介された職場は、商業施設の夜間の空調改修の施工管理だった。給料は一番良かったが、とにかく一番キツイ現場だった
夜勤だし商業施設内は寒い。改修なのであちこち動き回る軽作業があり、埃だらけだし、高所は凍えるほど寒い
人間関係も最悪で、4人ぐらい明らかに性格の悪いヤンキーが同僚だった。しかも別の派遣会社から派遣されているので、中立に近い敵なのだ。それと一緒に仕事をしたり、教えを請わないといけない。
上司もわをかけて嫌な奴だった。そいつのセリフは「君には失望してばかりいる。何時になったら君を雇って良かったと思わせてくれるんです?全然仕事やる気見えないんですけど」しか覚えてない。この上司が私を落第にして、派遣会社に返品したのは想像できる
空調の設備については今思い出しても全く分からない。とにかく毎日眠いし寒いし、軽作業はキツイし、職人と同僚は怖いし、勉強しなきゃいけないことは山ほどあるし、本当にきつかった。結局三か月で契約終了となるが、それでもよく持ったと思うほどだ
初めて職人と言われる人々と仕事をしたが、本当にエロネタが好きなおっさんだった。そして驚異的に体力がある。昼別の現場で働いて、ここに出勤してまた朝まで働いているのだ。しかもきつい肉体労働なのだ。労働基準法を全く無視して同じ人間とは思えなかった
同僚も職人もすごい個性的な人物ばかりだったが、あまり覚えていない。同僚の施工管理と上司は明らかに嫌な奴だったが、職人は面倒で怖いが、嫌な奴ではなかった。むしろ面倒見がよくてなれなれしいので、疲れるなと思うほどだった
一人自分みたいなコミ症のメンヘラが別の派遣先から、派遣されていた。ポケモンが好きなようだった。ヤンキーの先輩に囲まれていつも厳しく叱責されていた。
おまえこの現場見てなんとも思わないのか?なにがいけないかいってみろ。といって毎日クイズ大会をやっていたのを覚えている。しどもどろで全然答えられない。そのたびイライラした態度で、何度いえばわかんだよ。お前自分で考えて行動できないのか、と詰られていた
結局私が現場に来て一か月程度で、後送されてしまった。いじめていたヤンキーは「全然使えないから、派遣元に文句言って、すぐに返品してもらった」と雑談していた
私は安全管理で、職人がヘルメットしてるか、火機の使用を事前に届け出ているか、ということを報告して監視する仕事があった。商業設備の改修の場合、火花が出るサンダーのような工具でも、事前に火機使用の届け出を客(商業設備のオーナー)に提出する必要がある
朝礼も私の役目だった。施工管理の現場では必ず朝礼をやるよう義務付けられている。全員の前で点呼と火気使用をもういちど確認して、本日の安全事項を伝えなければならない。
ひきこもりには本当につらい仕事で、人前で大声出すのも嫌だし、どの業者か名前を覚えるのも大変だし、何の安全注意をしなければいけないのか、毎回考えなければならない。それを誰に教えてもらうでもなく、見よう見まねでやらないといけない
施工管理の仕事はちゃんと空調のダクトやパイプがつながっているか調べて、職人の必要な資材を事前に購入して、現場で受け取る仕事もある。これは本当に無能には無理だった。職人につきっきりでヒアリングして、施工管理について知識があり、同僚ともあれこれ打合せできないとこなせないのだ
施工の写真をとって、wardで施工状況をプリントする、という仕事もあり、これは私でも出来た。だが事務所のパソコンを使うのは本当に大変で、どのファイルにどのように保存するとか、上司が使っていない時を見計らって作業する必要がある
私はほとんど現場の粉塵掃除と、職人の工具を取ってきたりしてきた。金髪ロンゲの性格の悪い爺ヤンキーの施工管理に、お前はルンバ(掃除ロボット)だなと言われた。この人物に「もし工具壊したら、お前の派遣会社に連絡して、お前に賠償してもらうからな!ちゃんと給料から払えよ!」と本気で脅されたこともある
ヤンキーたちからは常に見下されて、常に呼び捨てで、あれとかこれとか指さされて笑われていた。すれ違ってこちらから挨拶しても、向こうはシカトが基本だった。なぜか着信も拒否されており、業務がしづらかった
二か月くらいは働いた後、設備管理の監視業務で居眠りしたのがばれた。現場では常にたちっぱで居眠りなんかできないが、空調の監視中にうつらうつらしているのを警備に見られて、きつく怒られたのだ。業務には大事には至らなかった
しかしそれがきっかけで私の交換(別の派遣と交代)が決定され、若い派遣が送られてきた。通勤距離が長すぎるという理由で転換を希望していたらしい。チビで太っていたが私よりはるかに有能で、彼女と同棲しているらしかった。でもパソコンを使うのは苦手なので、wordとexcelをつかった進捗状況の作り方をいくつか教えた
私の上司のおなじ派遣の人もすごい個性的な人物で、やせて気弱なモー娘オタの陰キャだった。とんでもない努力の人物で、建築系の大学を卒業後、空調系の現場を何年も経験し、叱られ続け、今やこの現場の現場監督補佐の立場にある。
職人と同じくらい働き者で、通勤片道二時間、朝まで残業は当たり前、毎日事務所の机の下で眠っていたそうだ。毎回職人たちにアイドルおたくなのをねたにされて、あだ名で呼ばれてはいた。が空調の施工知識経験とも豊富な働き者なので、職人とヤンキーの同僚の全員に重用され頼りにされていた。
派遣先の大手空調会社の正社員登用の打診も来ているそうだが、自分の時間がなくなるからという理由で断っていた。もうすでに自分の時間などないように見えたが
私は三か月の雇用期間が終了すると、普段通りに終業して、誰と話すこともなく、惜しまれることなく、忘れ物もなく、二度とかかわりを持たなかった