2018年7月1日 石油プラント派遣単身赴任から帰省した夏

横浜にオフィスがある新築戸建ての建築会社の派遣業務。横浜にオフィスがあるので、その近辺の新築戸建ての施工管理として派遣された

仕事内容はきわめて簡単で、ほとんど新築戸建てを清掃するだけ。 清掃に人手が足りないわけではないが、建設中の戸建てには施工管理を派遣するような取り決めがあって、でくの坊を派遣する必要があるらしい

作業現場はおもに新築の住宅地の建設予定地。立派な土台だけ出来上がった新規住宅地があるので、そこの家が立つまで品質管理を行う。

夏場はとんでもなく暑かった。都市部のクーラーなしの建物の野外作業になるので、二リットルの魔法瓶がすぐになくなるくらい水分が足りなくなる。当時はコロナ前でマスクをつける習慣がなかったが、それでも熱射とヘルメットと作業服で地獄のような不快感だった

そして施工管理の作業服がすぐに汚れて洗うのがすごい大変だった。竣工中の現場は泥や埃が舞い散っており、作業服がすぐに汚れてしまう。ごわついた綿の作業服なので、洗うのが非常に大変だった

初日に同じ派遣元から派遣されている同僚に仕事内容を聞くが、つまらない仕事で給料が安いので転職したいといっていた。もと携帯キャリア店舗の一人店長で、店舗が潰れたので夢真に入ったらしい。結婚して子供ができるので、もっと給料の高い仕事への転職すると言っていた。

何日か後にすげー怖い派遣先の代表取締役にあう。周りの人間はすべて呼び捨てで、正社員相手だろうがしょっちゅうクイズ大会を開いている。敏腕の建築士らしく、常に威圧的で、平気で面と向かって馬鹿と呼び捨てにする

この派遣も最短の三か月で切られたが、派遣切りが決まったのは、派遣開始の三日目ぐらいだと思う

戸建ての改装中の現場に言って時間をつぶしていた。そこの職人にあとは自分らが片付けとくから、早めに帰っちゃいなよ、と言われたのだ。そのことば鵜呑みにして、終業前15分前に帰宅した。

その様子を実は車で待機していた社員に見られて、それが前述の怖い取締役にチクられ、さんざん罵倒された。お前もう首な、もう来なくていいよと言われたのを覚えている。

だが派遣の契約では、その程度の怠慢で契約を切るのは違反になるらしい。三カ月の契約期間満了で切られるという運びになった

新築の現場で雑用か清掃をこなすだけの馬鹿でもできる仕事だった。だから実際にやるのはなかなかしんどい仕事だった。大体現場は首都圏で通勤は片道一時間半で、満員電車

現場は埃っぽくて仮設トイレはすごい汚い。現場に来るたび頑張って仮設トイレの清掃をしていた。

やることもなく時間が流れるのがとにかく遅い。夏場の暑さもきつかったが、冬場はもっとキツイ。外で何もしてないと寒くて、やることもない。汚れの不快感も厚着になる冬場のほうがキツイ。寒い雨の日と、仮設トイレの清掃のきつさといったら・・・

例によって建設の正社員たちはとんでもなく忙しいようで、担当する戸建てを休みなく移動を繰り返しているようだった。毎日残業ばかりで全然休日がないらしい。自分が世間知らずで仕事をなめてたので、正社員の方からありがたいお叱りをうけた

覚えているのは20代前半の若い女性正社員の一人だ。ほかでもない自分が早退したのをチクって、首にした切っ掛けを作った人物なんだが

この会社のアイドル的存在なんだろうが、かわいくてあわてんぼうという珍しいタイプだった。よく早口になったりして、落ち着くようにたしなめられるという、稀な性格をしていた。しかし過酷な施工管理の正社員の多忙な業務を毎日こなして、客観的に見て立派な若者だった

まあ職人からみても、あんなに若い女が施工管理でバチバチ頑張ってるとなると、特別扱いせざるをえまい。

自分30代半ばのスキルなしの中年だったので、酷い劣等感を感じていたのを覚えている。若くてかわいい女性がそれだけ仕事ができるなら、自分のようなニート上がりの中年などなんの存在価値もない

この派遣先が終了したのは11月くらいの寒い日だった。新築の戸建てでわずかな清掃しかやることがなく、日が落ちて照明のない室内が暗くなるのをじっと待っているしかなかった。

今思えば自分みたいな無能にはぴったりの仕事だったが、ストレスも肉体的な疲労もすごかった。仕事内容は簡単だが、前述の怖い上司と、ピリピリした正社員にいつ遭遇するかわからない。必死に仕事をしているふりをしているしかない。毎日横須賀線の通勤ラッシュに巻き込まれて、現場に行くのが憂鬱で仕方なかった。なんというか仕事が簡単なだけで、ほかは全然よくなかった

派遣終了後ほどなく、営業に制服を返却したが、ドン引きするほどすげえ真っ黒だった。今までのバイトもすべてそうだが、辞めるころには清掃ばかりで制服が真っ黒になっている