薬屋のひとりごとレビュー – Web小説コラム | harano

薬屋のひとりごとレビュー

2025年11月27日 更新

日本のWeb小説系の頂点的小説で、2011年小説家になろうで投稿開始後、2025年現在4000万部をうりあげた

日本どころか世界のweb小説界隈でも、今後これだけ売れる小説が出現する可能性は低い

内容

内容は女性向けのシンデレラストーリーで、人さらいにさらわれた女性主人公が、ひょんなことから宮廷におくられ、帝の薬師に抜擢される。

聡明な主人公が薬剤の知識を要いて、宮廷の陰謀を解決していく。シンデレラと女性探偵を合わせたようなジャンル。

セールスポイントとして、主人公は出世欲と恋愛意欲の低いにもかかわらず、帝の求愛を受け成り上がるところが、現代女性に好まれたと思われる

タイトルとの剥離

タイトルからしてスケールの小さい商売ものに見える。だが内容は壮大なシンデレラストーリーになっている。

このタイトルと内容の剥離は、金字塔になる奇跡的な条件だった可能性がある。この親しみやすいとタイトルと、真逆の女性の願望を露骨に叶える内容。

そしてweb小説開拓期で、奇跡的に目に留まって売れに売れた。その偶然が奇跡的にかみ合ってお化けIPに成長した

語られない

ラノベ全体の傾向が薬屋の独り言に見られる。売り上げに対して、内容が全然語られない。

ケータイ小説の恋空に近い傾向があり、女性向けであり、作者とキャラクターの知名度が売り上げに対して異様に低い

キャラや内容の話題の少なさから、ライト層や一般層が大多数の読者だと思われる

2025年現在、4500万部の売り上げを達成する、なろう系最高の作品といえる。ただしその代わり欠点もあって、熱心に語ってくれるオタクの少なさから、売り上げが流動的だと予想される

つまり一般層主体の流行もので、ブームが去ると、今までの読者が一斉にライトノベル市場から去ってしまう懸念がある

保守的なビジュアル

このIPのパッケージビジュアルは極めて保守的で、女性主人公のきりっとした判子絵ばかりで、体のラインがでない着物のような服装。

表情や構図のバリエーションは乏しく、他の登場人物が露出することは少ない。あえて言うとモナリザを日本的な判子絵にしたような、定番のものばかり

方向性としては定番、保守的、古典的な売り方をしているIPとみなせる。

薬屋頼みの出版業界

出版社は新規を売り込みたいが、結局薬屋しか売れない。これはラノベのような大衆文学の宿命だと感じる。ラノベって基本的に売り上げで格付けが決まるのだ。それ以外の物差しがないので、一番売れている薬屋さえあればいいということになる

作家や出版社は個性的な新作だと売り出しているが、空回りしている。薬屋を打倒する気がねがなく迎合している。よってより強い薬屋にアメーバのように取り込まれてしまうのは、むしろ自業自得なのだ

今後薬屋はより神格視されていくだろうが、それがコンテンツの多様性を否定し、より先細りを加速させると予想する