「私が町長です」で同じみ、キドラントの生贄の洞窟イベント。シナリオ進行とは無関係で、大したものも手に入らないどうでもよいイベントである。しかしリマスターで唯一修正されたイベントなので、特筆しなければならない

西方地域の雪原にあるキドラントの村は、生贄を要求するモンスターに脅かされていた。

キドラントの町長に話しかけると、魔物退治を懇願される。ここまではRPGでも古典的な展開である。

しかし町長の案内で洞窟に入ると、入り口がふさがれ閉じ込められてしまう。町長は人間の屑で、魔物退治をダシに、最初から冒険者を魔物の生贄に差し出す魂胆だったのだ。

魔物がはびこる洞窟の奥深くまで進むと、ついに生贄を要求する魔物が姿を現す。以外にもその魔物とは凶暴なネズミの群れだった。ネズミの群れはほかのモンスターとは一線を画す猛烈な強さ。ラットフィーバーで全員を攻撃してくるうえ、数が多くダメージを与えてもきりがない。

なすすべがなく這う這うの体で逃げ出す主人公たち。かといって洞窟からは出られず八方ふさがり。しかしその時洞窟の外から女の声が。入り口まで引き返すと、キドラントの村娘が入り口を開けてくれて脱出に成功する。

村娘はニーナという名前で、別のイベントで登場するポールという恋人の青年を探しているのだが、ここでは割愛する。

そのあと西の森にいるモンスター博士「きょうじゅ」に、キドラントを脅かすネズミの正体を明かされる

生贄の洞窟で遭遇したネズミの群れを率いるのは「アルジャーノン」という名付けた天才ネズミ。教授がツヴァイク公の依頼で作った改造生物だったが、脱走して、その後キドラントの村を脅かすに至ったようだ。

アルジャーノンを退治する方法を尋ねると、ねこいらずをくれる。こんなもんが効くか半信半疑の主人公に対し、きょうじゅはネズミだから効くと断言する。

再度キドラントに赴くと、何と村娘のニーナが生贄として洞窟に放り込まれた後だった。ニーナを助けるため、急いで洞窟の奥深くに進む主人公たち。ついにあのネズミの群れに相対するが、一足遅かったのか肉をかじる音がする。

今度はきょうじゅに渡された猫いらずで憎きアルジャーノンを迎え撃つが、何と効果がない。天才ネズミなので、殺鼠剤にかかるような馬鹿ではなかった。きゅうじゅ、あなたはクソだ。

だがネズミの群れの中で、猫いらずにかからないのはアルジャーノンだけ。 ダメージを受けていない個体がそうなので、狙い撃ちする。やがてアルジャーノンは打ち取られ、リーダーを失ったネズミの群れは壊滅した。

アルジャーノンを倒したが、ニーナは助けられなかった。狼狽する主人公たちだったが、何と後ろからニーナが現れた。ニーナは機転を利かせて、ネズミの群れに干し肉を投げて、難を逃れたようだ。

ようやく村を脅かす魔物を退治し、自分をはめた町長に相対する主人公。しかし「私が町長です」というセリフがあるだけ。これでイベントは終了である。村人を助けても報酬どころかリアクションすらないという、RPG史に残る斬新なイベントであった(単にフラグを設定し忘れただけなんだが)。

さてリマスタ版ではこのしょうもないイベントだけはしっかり修正されており、ネズミの群れを倒した後に、町長に報酬を要求するか殴るかできる。

報酬を要求すると、一万オーラムと町長のありがたいセリフを聞ける。

殴るを選択すると、「ヒー!」といって走り回るだけ。ただしこの選択肢は討伐後一度きりしか選択できず、二度と現れない。

特筆すべきはなぜかネズミの群れのグラフィックも大幅に改良されており、新規に書き直されたうえにアニメーションまでする。ラスボスよりもモンスター絵のクオリティは上になっている。余談だがアルジャーノンはボスの中で数少ない複数タイプなので、追加イベントのボスとして起用するべきだったなと感じる。

HDリマスター版は、正直背景絵が良くなっただけの期待外れの移植作という評価だが、この生贄の穴イベントのクオリティが上がっていることだけは評価できる。ただの町長が一万オーラムポンと出してくれるのは違和感がぬぐえないが。

総じてロマサガ3の生贄の穴イベントはドラクエ7のレブレサックや、TES4のParanoiaに並ぶRPG史に残るシナリオなので、リユニみたいな寒いイベントが追加されるよりはましだったと思うしかない